
NISAの「つみたて投資枠 or 成長投資枠」、メインにするのはどっち?
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公開日:2025/06/06 更新日:2025/06/06文/波多野 剛之
NISA制度は2024年から「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つの投資枠が設けられました。それぞれに特徴があり、メリット・デメリットを理解したうえで活用することが、効率的な資産運用につながります。
本記事では、現状の利用状況(投資傾向)も踏まえながら、これらの投資枠を効果的に活用する方法を紹介します。
つみたて投資枠と成長投資枠は併用可能!
「つみたて投資枠」と「成長投資枠」という2つの投資枠をあわせて、取得価額ベースで最大1,800万円まで非課税投資が可能です(この1,800万円を「非課税保有限度額」と呼びます)。
非課税保有限度額1,800万円のうち、成長投資枠の上限は1,200万円です。一方、つみたて投資枠は1,800万円すべて利用可能です。したがって、成長投資枠を上限まで使う場合、残りの600万円分はつみたて投資枠で投資することになります。
つみたて投資枠のメリット・デメリット
つみたて投資枠は、少額から長期的に積立投資ができるよう設計されています。年間の買付上限は120万円で、金融庁が提示する条件を満たした投資信託やETFに投資できます。
メリット
少額からコツコツ始められる
つみたて投資枠は、投資初心者の方でも無理なく始められるように設計されています。月々の少額積立が可能で、一度設定すれば定期買付が自動的に行われるため、手間をかけずに長期的な資産形成を継続できます。多くの金融機関では、買付額や頻度をあらかじめ設定できるサービスを提供しており、計画的な運用が可能です。
ラインナップが初心者向き
つみたて投資枠の投資対象は、金融庁の基準を満たす厳選された投資信託やETFです。2025年5月末時点では、インデックス型投資信託が260本、アクティブ型投資信託が57本、ETFが8本選定されています。
国内外の株式や債券など幅広い資産に分散投資できるインデックス型投資信託が中心で、運用コストの信託報酬も一定水準以下とされているため、長期的な資産形成に適しているでしょう。
デメリット
つみたて投資枠は「長期・積立・分散」投資向けの投資枠です。その特徴ゆえに、いくつかのデメリットがあります。
まとまった資金で大きなリターンを狙えない
つみたて投資枠は少額からの積立投資が可能ですが、短期間でまとまった資金を投じて大きなリターンを得ることを目的とした制度ではありません。
投資の世界では、銘柄選定や投資のタイミングによって、まとまった資金を短期間で投資し、大きな利益を狙う方法もあります。しかし、つみたて投資枠では一括投資ができず、年間の投資上限額は120万円に設定されているため、短期集中型の投資には適していません。
購入できる商品が限られる
つみたて投資枠の対象となる商品は、金融庁の基準を満たした投資信託などに限定されています。主な選定基準は以下の通りです。
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信託契約期間が無期限または20年以上
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ヘッジ目的など以外の目的でデリバティブ取引による運用を行わない
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毎月分配型ではない
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販売手数料0%のノーロードで、信託報酬は一定水準以下
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総資産額50億円以上、運用実績5年以上、信託期間中の3分の2以上で資金流入超の実績がある(アクティブ型投資信託託の場合)
以上から、リスク管理はしやすいものの、自身の投資スタイルや目的に応じた柔軟な商品選択は難しい側面があります。
成長投資枠のメリット・デメリット
成長投資枠は、つみたて投資枠と比べて自由度が高い投資枠です。特徴やメリット、デメリットを理解し、自身のリスク許容度に応じて活用しましょう。
メリット
年間の非課税投資枠が240万円ある
成長投資枠では、年間最大240万円まで非課税で投資可能です。つみたて投資枠の年間投資上限額120万円と比較すると、より多くの資金を運用できます。
幅広い商品・投資スタイルを選べる
成長投資枠では、株式、ETF、投資信託など、さまざまな金融商品を購入できます。投資スタイルに応じて最適な投資対象を選択できるのが魅力です。
例えば、成長投資枠の範囲内で、つみたて投資枠の対象となる投資信託を購入することも可能です。定期的な買付設定もできるため、リスクを抑えた長期的な積立・分散投資にも活用できます。
また、成長投資枠では一括投資も可能なため、市場環境に応じた柔軟な投資ができます。相応のリスクは抱えますが、短期集中型のトレードで売却益を狙う投資手法も可能です。
配当金を非課税で受け取れる
成長投資枠では、つみたて投資枠では投資できない株式に投資できます。通常、配当金には20.315%の税金がかかりますが、受取方法を「株式数比例配分方式」にすることで、非課税で受け取ることが可能です。
また、配当金を再投資することで複利効果が期待でき、資産運用の効率を高められます。リターンの最大化を目指すなら、必要な資金以外は積極的に再投資を検討してもよいでしょう。
なお、注意点としてNISA口座は日本国内での課税を非課税にする制度ですが、米国株や米国ETFの配当所得については米国現地で源泉徴収が行われます。この米国課税分はNISAの非課税対象外のため、NISA口座では差し引かれた状態で配当金を受け取ることとなります。
デメリット
成長投資枠のメリットは、場合によってはデメリットにもなります。特に投資初心者の方にとっては、自由度が高いことで、どのように活用すればよいか迷うこともあるでしょう。
投資の難易度が上がる
成長投資枠では、株式や投資信託など多様な金融商品に投資できるため、投資対象の選定や購入・売却の判断を投資家自身で行う必要があります。適切な投資判断を行うには、十分な情報収集や企業分析が求められます。
特に、市場の値動きを見極め、適切なタイミングで金融商品を売買することは容易ではありません。投資の自由度が高い分、判断の難しさが増し、誤った判断によって損失が生じる可能性もあるため、慎重な運用が重要となります。
投資枠に制約がある
成長投資枠では、非課税保有限度額1,800万円のうち、1,200万円までしか投資できない制限があります。NISAの投資枠を最大限に活用するには、つみたて投資枠との併用が必須です。
また、成長投資枠の年間上限額は240万円、つみたて投資枠は120万円と定められており、1年間で活用できる投資枠は両枠を合わせて最大360万円です。いずれの枠も上限を超える投資はできません。投資対象の自由度はあるものの、投資額の上限による制約がある点に留意が必要です。
どちらの投資枠がおすすめ?
つみたて投資枠と成長投資枠のどちらが適しているかは、投資家の目的や投資スタイルによって異なります。優劣をつけられるものではありませんが、選択の際の参考として、次のような見方もあります。
人気が高いのは成長投資枠?
2024年1年間の全金融機関における新NISAの買付額では、成長投資枠が約12兆4,628億円となり、NISA全体の買付額の約71%を占めています。一方、つみたて投資枠の買付額は約4兆9,857億円で、全体の約29%にとどまっています。当然のことながら、年間投資枠の上限に違いがあるので一概には言えませんが、成長投資枠を多くの投資家が活用していることが分かります。
成長投資枠の魅力として、投資対象の自由度の高さや年間240万円の投資上限額が挙げられます。2025年6月2日時点では、投資信託だけでも2,000本以上、ETFなども300本以上が対象となっており、幅広い選択肢の中から投資戦略を立てることが可能です。
売却を想定するなら成長投資枠?
つみたて投資枠を利用する場合、投資対象となる投資信託や株式は、長期保有を前提に積立を継続することで資産形成の効果が期待できます。一方、成長投資枠では年間240万円の範囲内で柔軟な売買も可能です。
例えば、長期保有を目的とする金融商品はつみたて投資枠に、将来的な売却を視野に入れた商品は成長投資枠に、といった使い分けが可能です。NISAでは、売却後の投資枠が簿価方式に基づき翌年以降に復活するため、投資枠の再利用が可能です。この仕組みを活用することで、売却を想定した運用計画を立てやすくなります。
投資に慣れるまではつみたて投資枠?
投資初心者の方は、まずつみたて投資枠の活用から始めるのがおすすめです。少額から積立投資ができ、金融庁が厳選した商品を活用することで、価格変動のリスクを抑えながら、投資の基本を学ぶことができます。
次第に投資に慣れ、運用資金にも余裕が出てきた段階で、より自由度の高い成長投資枠の活用を検討するとよいでしょう。つみたて投資枠と成長投資枠を組み合わせることで、安定的な資産形成と柔軟な運用の両立が期待できます。
なお、年間の投資枠を使い切る必要はないため、自分のペースで計画的に投資を続けていきましょう。
NISAの活用法はライフプランによってさまざま
NISAを活用した投資を検討する際は、自身のライフプランを考慮し、最適な投資枠を選択・活用することが重要です。年齢やライフステージ、投資目的やスタイルに応じて、つみたて投資枠と成長投資枠を適切に使い分けるとよいでしょう。
例えば、将来の資産形成を見据えてつみたて投資枠を活用するなら、20代から始めるほうが時間を味方にできます。30代では、つみたて投資枠でコツコツ積み立てを続けながら、教育資金などを準備するために成長投資枠を併用する選択肢もあるでしょう。
40代・50代以降は、老後資金の確保が課題となるため、金銭的な余裕がある場合は成長投資枠を活用しながら、資産運用の幅を広げることができます。
このように、ライフステージや投資目的に応じたNISAの活用を検討することが大切です。東海東京証券では、投資家のライフプランに応じた運用プランのシミュレーションができる「投資ナビゲーター」を提供しています。自身の状況に合った最適な投資方法を見つけるために、ぜひご活用ください。