
FOMCとは? 知っておきたい世界経済への影響と投資戦略のポイント
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公開日:2025/07/22 更新日:2025/07/22文/伊藤 慎一
FOMCは、米国の金融政策を決定する重要な会合です。その決定は世界中の金融市場に大きな影響を与えます。しかし、FOMCの仕組みや意義、どのような影響を及ぼすのかは、投資初心者の方にとっては分かりづらい部分もあるかもしれません。
本記事では、FOMCの概要や役割、市場への影響、投資の際に注意すべきポイントを分かりやすく解説します。
FOMCを分かりやすく解説
経済ニュースをチェックしていると、FOMCという言葉を耳にすることがあるのではないでしょうか。FOMCは、金融政策を決定する委員会であり、株式市場や為替市場をはじめとする金融市場に大きな影響を与えます。まずは、その基本について解説します。
FOMCとは米国の金融政策を決定する会合のこと
FOMCとは「Federal Open Market Committee(連邦公開市場委員会)」の略称で、米国の金融政策を決定する委員会です。日本における日銀の金融政策決定会合に相当します。
FOMCは年8回の会合を開き、金融政策の方針を決定します。その決定に基づき、FRB(連邦準備制度理事会)が金融市場への介入を行い、各地区連邦準備銀行(地区連銀)が政策の実施を担います。
FOMCの構成メンバーは12名
FOMCの投票権を持つのは、FRBの議長・副議長を含む理事7名と、地区連銀総裁5名の計12名です。地区連銀総裁のうち、ニューヨーク地区連銀総裁は常に投票権を持ち、残る4名は1年ごとの輪番制で選ばれます。
FOMCには、投票権を持たない他の地区連銀総裁もオブザーバーとして参加しますが、投票権を行使できるのは12名のみです。
2025年のFOMCでは、投票権を持つメンバーのうち、ハト派(景気重視)が4名、中立が5名、タカ派(物価重視)が3名となりました。前年と比べるとハト派とタカ派が1名ずつ増え、中立が2名減少しています。
FOMCのスケジュール
FOMCは、約6週間ごとに年8回開催されます。必要に応じて臨時会合が開かれることもあります。各会合は2日間にわたって行われます。
2025年FOMCの開催日程(現地時間)
開催回 |
開催日 |
第1回 |
1月28日・29日 |
第2回 |
3月18日・19日 |
第3回 |
5月6日・7日 |
第4回 |
6月17日・18日 |
第5回 |
7月29日・30日 |
第6回 |
9月16日・17日 |
第7回 |
10月28日・29日 |
第8回 |
12月9日・10日 |
FOMCの終了後には、声明文が公表されます。声明文では、今後の金融政策の方向性や政策金利の決定理由、その背景などが示されます。
声明文の発表から約30分後には、FRB議長の記者会見が開かれます。ここでは、金融政策の方針について追加の説明が行われ、記者との質疑応答も実施されます。声明文には含まれなかった情報が明らかになることもあり、市場関係者の注目が集まります。
さらに、会合から約3週間後には議事録が公開されます。これにより、FOMCでの議論の詳細を把握することができます。
FOMCで決まる具体的内容
FOMCでは米国の経済情勢を踏まえ、さまざまな議論が行われますが、特に重要なのが政策金利(FF金利)の誘導目標の決定です。政策金利とは、中央銀行が民間の金融機関に資金を貸し付ける際に適用する金利のことで、FOMCの決定に基づき、景気や物価の安定を目的として段階的に引き上げ・引き下げが行われます。
FOMCでは、FF金利の上限と下限が設定され、その範囲内に収まるよう金融政策が実施されます。
最近の政策金利の動向
FOMCは2022年以降、インフレ抑制のためにFF金利の誘導目標を段階的に引き上げました。ゼロ付近だった政策金利は1年余りで5%を超え、2023年6月にはインフレの減速を受けて利上げを休止しています。2024年には政策金利の利下げが焦点となっていました。
利下げの可否は、FOMCの19名の参加者のうち、特に投票権を持つ12名の判断によって決まります。メンバーが考えるFF金利の適正水準を示すドットチャート(金利予測分布図)では、2024年末の中央値が4.6%と示され、利下げの時期が注目されました。
FOMCがもたらす経済的影響
FOMCで決定された政策は、個人や法人の一部にとどまらず、経済全体に広範な影響を与えます。世界中がFOMCの動向を注視する理由や、FOMCの決定が経済に及ぼす影響について、過去の事例を交えながら詳しく解説します。
世界中がFOMCに注目する理由
世界中がFOMCに注目する理由は、株式市場や為替市場を含む金融市場全体に大きな影響を及ぼすためです。FOMCの決定によって、市場が大きく変動することがあります。
例えば、
-
FOMCが政策金利の誘導目標を引き上げる
-
FOMCが政策金利の誘導目標を引き下げる
→投資や消費が促進され、株価の上昇が期待される
また、米国の政策金利が上昇し、日本の政策金利が据え置かれた場合、日米の金利差が拡大し、利回りの高いドル建て資産への投資が増える傾向があります。その影響で、ドルを買い、円を売る動きが強まり、円安ドル高が進みやすくなります。反対に、米国の政策金利が引き下げられると、円高ドル安が進む可能性があります。
過去のFOMCの決定とその影響
FRBは、経済情勢に応じて機動的に金融政策を実施してきました。代表的な例として、リーマンショック後の低金利政策と量的緩和(QE)、そして近年のインフレ対策のための政策金利の引き上げが挙げられます。
リーマンショック後、FRBは景気を刺激するため、FF金利の誘導目標を事実上0%近くまで引き下げました。さらに、長期国債や住宅ローン担保証券を大規模に買い入れる量的緩和策を実施し、市場に大量の資金を供給しました。
この金融緩和により、企業の資金調達が容易になり、個人の住宅購入意欲も高まりました。その結果、金融市場の安定化と景気回復につながりましたが、大量の資金供給が長期的なインフレリスクを高める要因にもなりました。
コロナ禍による経済の急激な悪化を受け、FRBはさらに大規模な金融緩和策を実施しました。ゼロ金利政策と資産買い入れを拡大しましたが、2022年に入ると物価の上昇が加速し、インフレ対策として政策金利の引き上げが行われることになりました。
FOMCの決定をどう投資に活かすか?
FOMCの政策金利の決定は、株式市場をはじめとする金融市場に大きな影響を及ぼします。そのため、投資家はFOMCの動向を注視し、慎重な投資判断を求められます。
ここでは、FOMCの決定が市場に与える影響と、それを投資戦略にどのように活かすべきかについて解説します。
ボラティリティの上昇に備える
FOMCの会合前後は、市場の変動が大きくなりやすく、イベントリスクが高まる局面となります。政策金利の決定によって、金利、為替、株価などの金融資産の値動きが激しくなることがあるためです。
例えば、事前の予想と異なる政策が発表されると、市場の動揺が広がり、株価が急騰または急落することがあります。一方で、想定どおりの内容であれば、市場の反応は限定的になることが多いです。
特に発表直後の30分間は、相場が荒れやすい時間帯です。声明文と記者会見のニュアンスの違いによって市場心理が変化し、急激な値動きにつながることもあります。
こうしたボラティリティの高まりに備え、適切なリスク管理が求められます。レバレッジをかけた取引で過度にポジションを持つと、思わぬ相場変動に対応できず、大きな損失を招くおそれがあります。無理のない範囲で取引を行い、分散投資やヘッジ手法を取り入れるなど慎重に対応しましょう。
金利の方向性を見極める
FOMCによる金融政策の決定は、長期金利、債券価格、為替レートなどの金融市場に影響を与えます。そのため、FOMC発表時の金利動向の見極めが、投資家にとって重要なポイントとなります。
例えば、FF金利の誘導目標の引き上げや量的引き締め(QT)の決定は、長期金利の上昇や債券価格の下落につながることが多いです。一方、利下げや量的緩和(QE)の実施は、長期金利の低下や債券価格の上昇をもたらす可能性があります。
金利の変動は、株式市場や為替市場にも大きな影響を与えます。利上げ局面では、株価が下落しやすく、為替市場ではドル高が進むことが多いです。一方、利下げ局面では、株価が上昇しやすく、ドル安が進む傾向があります。
FOMCによる金融政策の方向性を正確に捉えられると、投資対象の価格変動を予測しやすくなります。FOMC前後の市場動向を把握することで、長期的な投資計画やポートフォリオの見直しにも役立てることができます。
とはいえFOMCだけに振り回されないこと
FOMCの決定は市場に大きな影響を与えますが、それだけで市場の長期的なトレンドが決まるわけではありません。
2024年11月のFOMCでも、声明文の発表後に金利が一時的に上昇し、ドル高が進みましたが、その後のパウエル議長の発言を受けて市場の流れが反転しました。このように、FOMCの決定だけでなく、発表後の市場の解釈や追加発言によっても相場は変動します。
市場の動向を考えるうえでは、インフレの推移や経済成長率、労働市場の状況、企業の利益成長といった長期的な指標も重要になります。FOMCの決定は、短期的な市場変動を引き起こすことがありますが、投資を考える上では月次、四半期、年次といった長期的な視点も欠かせません。
また、大統領選挙などの政治情勢、国際的な経済動向、企業業績なども市場に影響を与えます。FOMCの決定だけに注目するのではなく、経済全体の中でその位置づけを考え、多角的な視点で分析することが大切です。
短期的な変動に一喜一憂するのではなく、中長期的な視点を持つことが、安定した投資成果を得るための鍵となるでしょう。
大切なのは情報収集の積み重ね!
FOMCの決定を適切に投資判断に活かすには、最新情報を把握するだけでは不十分です。経済全体の動向を見渡し、インフレ率の推移、景気の変化、企業業績の動向など、幅広い指標を継続的にフォローすることが求められます。
投資において重要なのは、一時的な市場の動きに振り回されるのではなく、地道な情報収集を積み重ねることです。長期的な視点を持ち、経済の流れを正しく理解することで、より安定した投資成果を目指せます。
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