投資で得られる収益には、インカムゲインとキャピタルゲインの2種類があります。これらは異なる特徴を持ち、投資の種類によってリスクやリターンの性格も異なります。
本記事では、インカムゲインとキャピタルゲインの違いや特徴、収益の所得区分や課税方法について解説します。また、初心者の方に適した投資スタイルについても解説していますので、ぜひ資産運用の参考にしてください。
インカムゲインとキャピタルゲインの違いとは
インカムゲインとキャピタルゲインは、どちらも資産運用で得られるリターンですが、それぞれ性質が異なります。
インカムゲインは、株式の配当金や不動産の賃貸収入などが該当し、一般的に資産を保有し続けることで継続的に得られる収益です。
キャピタルゲインは、保有していた資産を売却することで得られる売却益のことです。株式や不動産を安く購入し、高く売却することで、その差額が利益となります。キャピタルゲインは、資産の価値変動と売買のタイミングによって発生する収益です。
投資の種類別に見るインカムゲイン・キャピタルゲイン
主な投資の種類と、それに対応するインカムゲイン・キャピタルゲインは以下の表のとおりです。
投資の種類 |
インカムゲイン |
キャピタルゲイン |
預金 |
利息 |
なし |
債券 |
利息 |
売却益 |
投資信託 |
分配金 |
売却益 |
株式投資 |
配当金 |
売却益 |
不動産投資 |
家賃収入 |
売却益 |
金投資 |
なし |
売却益 |
ソーシャルレンディング |
分配金 |
なし |
暗号資産(仮想通貨) |
ステーキングや レンディング |
売却益 |
FX |
スワップポイント |
為替差益 |
預金は一定期間お金を預けることで、また債券は発行体に資金を貸し付けることで、利息というインカムゲインを得られます。投資信託やソーシャルレンディングの分配金、株式の配当金といったインカムゲインは、投じたお金が運用されて生み出された収益の一部に該当します。金のように、保有しているだけではインカムゲインが発生しない資産もあります。
前述のとおり、基本的にキャピタルゲインは資産を売却することで得られる売却益を指します。預金やソーシャルレンディングでは、原則として投資家が資産を売却することがないため、キャピタルゲインは発生しません。FXは、為替レートの変動により生じた為替差益がキャピタルゲインとなります。
インカムゲインのメリット・デメリット
インカムゲインは、利息や分配金など、定期的に支払われることが多い収益である点が投資家にとって大きなメリットといえます。ただし、メリットだけでなくデメリットもあるため、その特徴をしっかり理解しておく必要があります。
メリット:手堅く安定的な利益を得られる
インカムゲインの大きな利点は、資産を保有している限り、継続的に収益を得られる可能性がある点です。売却のタイミングによって金額が大きく変わるキャピタルゲインと異なり、資産の価格変動の影響を比較的受けにくい特徴があります。
また、株式の配当利回りや不動産の利回りなど、事前に収益水準が見通せるため、投資計画を立てやすいのもメリットです。特に老後の資金設計では、定期的な給与収入がなくなるため、安定したインカムゲインを得られることが生活の安定にもつながります。
デメリット:短期で大きな利益を得にくい
インカムゲインのデメリットは、キャピタルゲインのように短期間で大きな利益を得るのが難しいことです。株式の配当金は株価の数%程度であり、不動産の家賃収入も修繕費などのコストを考慮すると、必ずしも高いリターンが得られるとは限りません。短期間で高いリターンを求める投資家にとって、インカムゲインは適した選択肢とはいえません。
また、配当金は企業の利益の一部であるため、業績が悪化すると減配のリスクがあります。企業が倒産すれば、株式の価値自体がなくなるため、配当金も支払われません。不動産の家賃収入も、入居者が見つからず空室が続くと、想定していた収益を得られない可能性があります。
そのため、安定したインカムゲインを得るには、目的に合ったETFや投資信託の選定、株式投資では市場の動向や企業業績の分析が欠かせません。不動産投資では、空室リスクに備えた対策が必要です。
キャピタルゲインのメリット・デメリット
キャピタルゲインは、資産を売却した際に得られる売却益のことです。大きな収益になる可能性がある点が魅力的ですが、メリットとデメリットの両面があります。
メリット:短期で大きな利益を得られる可能性がある
キャピタルゲインの魅力は、資産価格の上昇を活用し、短期間でまとまった利益を得られる可能性がある点です。例えば、株式や不動産の価格が上昇した際に売却すれば、一度に大きな収益を確定できます。
また、市場の状況を見極めて適切なタイミングで売買を行えば、長期間資産を保有しなくても利益を得られる可能性があります。情報分析力や売買の判断力が求められるものの、資産形成を効率的に進めたい投資家にとって有力な選択肢となります
デメリット:大きなキャピタルロスを起こす恐れがある
キャピタルゲインを狙う投資には、大きなリスクが伴います。リターンを求めるほど、リスクも高まるのが投資の基本原則です。
例えば、株式投資では、値動きの大きい銘柄を短期売買する手法が該当します。企業の業績や経済情勢、投資家の心理など、さまざまな要因によって価格が急騰・急落する可能性があり、想定外の下落が起これば、大きなキャピタルロス(売却損)を被る恐れがあります。
リスクの高い投資を行う際は、損失を最小限に抑えるために、売買ルールを事前に決めるなど、慎重な戦略が欠かせません。大きな収益を狙うには、それに見合うリスクを受け入れる必要がある点が、キャピタルゲインの本質的なデメリットです。
インカムゲイン・キャピタルゲインにかかる税金・税率の違い
インカムゲインとキャピタルゲインは、それぞれ異なる税制の対象です。前者は配当所得や利子所得などの継続的な収入に対して課税されますが、後者は資産の売却益に課税されます。2つの収益の所得の種類や税率の違いを理解しておきましょう。
インカムゲインにかかる税金・税率
投資の種類 |
所得の種類(税率) |
預金 |
利子所得(20.315%) |
債券 |
利子所得(20.315%) ※公社債の場合 |
投資信託 |
配当所得(20.315%) ※普通分配金のみ、特別分配金は非課税 |
株式 |
配当所得(20.315%) ※総合課税もしくは申告分離課税との選択可 |
不動産 |
不動産所得(総合課税:所得税5%~45%、住民税10%) |
金 |
該当なし |
ソーシャルレンディング |
雑所得(総合課税:所得税5%~45%、住民税10%) |
暗号資産(仮想通貨) |
雑所得(総合課税:所得税5%~45%、住民税10%) |
FX(国内店頭取引) |
雑所得(申告分離課税:20.315%) |
FX(海外取引) |
雑所得(総合課税:所得税5%~45%、住民税10%) |
※「20.315%」の内訳:所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%
投資で得られる利益は、所得の種類によって適用される税率が異なります。また、総合課税に分類される所得は、他の所得と合算されるため、課税所得が増えるほど適用される税率も高くなります。
キャピタルゲインにかかる税金・税率
投資の種類 |
所得の種類(税率) |
預金 |
該当なし |
債券 |
譲渡所得(申告分離課税:20.315%) ※特定公社債の売却益 |
投資信託 |
譲渡所得(申告分離課税:20.315%) ※公募株式投資信託(ETF含む)の売却益 |
株式 |
譲渡所得(申告分離課税:20.315%) ※上場株式の売却益 |
不動産 |
短期譲渡所得(申告分離課税:所得税30%、住民税9%、復興特別所得税0.63%) ※所有期間5年以下 長期譲渡所得(申告分離課税:20.315%) ※所有期間5年超 |
金(現物) |
短期譲渡所得(総合課税:所得税5%~45%、住民税10%) ※所有期間5年以下 長期譲渡所得(総合課税:所得税5%~45%、住民税10%、課税対象譲渡所得の1/2が課税対象) ※所有期間5年超 |
ソーシャルレンディング |
該当なし |
暗号資産(仮想通貨) |
雑所得(総合課税:所得税5%~45%、住民税10%) |
FX(国内店頭取引) |
雑所得(申告分離課税:20.315%) |
FX(海外取引) |
雑所得(総合課税:所得税5%~45%、住民税10%) |
※「20.315%」の内訳:所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%
多くの金融商品の売却益は申告分離課税の譲渡所得に該当しますが、例外もあります。不動産の場合、売却する不動産の所有期間によって税率が変わるので注意が必要です。金は、金地金などを売却した場合、総合課税の譲渡所得となります。また、FXのうち国内店頭取引は雑所得の中では例外的に申告分離課税が適用されます。
売却益や配当金が非課税となる iDeCoやNISAなどの制度においては、この限りではありません。このような非課税制度をうまく活用することも大切です。
インカムゲインとキャピタルゲインはどちらがおすすめ?
インカムゲインとキャピタルゲインはそれぞれ一長一短であり、状況に応じて最適な選択をする必要があります。両者の特性を理解し、投資目的や資金的な余裕などを踏まえて、適切な資産運用戦略を立てましょう。
インカムゲインはリスクを抑えたい人におすすめ
インカムゲインは、長期的な資産運用によって安定した収益を得る手段の一つです。特に、国債の利息や信用力の高い債券の利息は比較的安定しており、定期的な収益を見込めます。
そのため、投資に割く時間が少なく、できるだけリスクを抑えながら定期的な収入を得たい人に向いています。短期的に大きな利益を狙うことは難しいですが、安定した資産形成を目指す投資初心者の方には適しているでしょう。
キャピタルゲインはリスク許容度が高い人におすすめ
キャピタルゲインを狙う投資手法は、金融商品を売買して差益を得ることを目指します。そのため、金融商品の価格変動を頻繁にチェックしたり、市場の動きを分析したりする時間が必要です。
とはいえ、短期的な価格の変動は予測が簡単ではなく、元本割れのリスクを受け入れなければなりません。損失を最小限に抑えるためには、損切りの基準を設定するなど、慎重な投資計画が求められます。リスクを取っても大きな利益を目指したい場合、キャピタルゲインを狙う投資手法を検討してもよいでしょう。
どちらを狙うことも可能だがバランスが大切
インカムゲインとキャピタルゲイン両方を狙う投資戦略は可能です。例えば、株式を長期間保有して配当金(インカムゲイン)を受け取りつつ、適切なタイミングで売却して売却益(キャピタルゲイン)を得る方法があります。
重要なのは、自身の生活スタイルやリスク許容度、現在の資産状況を考慮して、どちらの手法に比重を置くかを検討することです。一例として、投資資金の半分はインカムゲインを狙った安定的な運用に充て、残りの半分はキャピタルゲインを狙った運用に充てるといったバランス感覚が求められます。
リスクを許容範囲内に抑えつつ、継続的な投資ができれば長期的な複利効果も期待できます。ただし、将来的な経済状況の変化などによって、インカムゲインもキャピタルゲインも価格変動します。必ずしも期待するリターンが得られないことがある点には十分留意しましょう。
まとめ
インカムゲインとキャピタルゲインは、どちらも投資から得られる収益です。それぞれにメリットとデメリットがあり、税率も異なります。
一般的に、リスクを抑えたい方はインカムゲインを狙うほうがよいでしょう。一方、リスクを許容し、大きな利益を目指す方はキャピタルゲインも選択肢に入ります。自身の資産状況や投資目的に応じて、バランスよく資産を運用することで、着実な資産形成が可能です。
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