
REIT(リート/不動産投資信託)とは?仕組みやメリット・デメリット、関連商品について分かりやすく解説
#REIT
#資産運用
#投資初心者
公開日:2025/04/11 更新日:2025/04/11文/阿部 司 日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
REIT(リート/不動産投資信託)は不動産に間接的に投資する金融商品で、多額の資金が必要となる実物不動産に比べ、少額から投資が始められます。とはいえ、投資初心者にとってはその仕組みが少し難しく感じられるかもしれません。
本記事では、REITの基本的な仕組み、メリット・デメリット、関連商品について、分かりやすく解説します。
もくじ
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REITとは
REITは「Real Estate Investment Trust」の略称で、「不動産投資信託」のことです。投資家から集めた資金を使ってオフィスビルや商業施設、マンションなどの不動産に投資し、その収益である賃貸収入や売買益を分配金(株式投資でいうところの配当金)として投資家に分配する金融商品です。
REITの歴史は古く、1960年にアメリカで創設されたものが最初です。
J-REIT(Jリート)とは~不動産投資法人について~
日本版のREITのことを「J-REIT」といいます。
J-REITは、「不動産投資法人」と呼ばれる会社のような形態で運営されています。
不動産投資法人は、主に不動産の取得・運営管理などを目的として設立された法人で、投資家からの出資と金融機関からの借り入れで資金を調達し、その資金で取得した不動産の運営管理などから得られる収益を投資家に分配しています。
J-REITは、実際の不動産の運用などの実質的な業務を行うことが法律によって禁止されているため、実務的な業務は資産保管会社などに業務を委託して不動産に投資しています。
J-REITが登場したことで、個人でも少ない資金で間接的に不動産への投資を始められるようになったことから、不動産投資がより身近になりました。国内の証券取引所には50銘柄以上が上場しており、オフィスビルや住宅、物流施設、ホテルなど、さまざまな種類の不動産に間接的に投資できるようになっています。
J-REIT(不動産投資信託)と実物不動産投資の違い
J-REITと実物不動産投資には、主に以下のような違いがあります。
J-REIT |
実物不動産投資 |
|
投資対象の不動産 |
オフィスビルやホテル、商業施設やマンションなど |
アパートやマンションなど主に居住用不動産 |
必要資金 |
少額から可能 |
一般的に多額の資金が必要 |
分散投資のしやすさ |
しやすい |
しにくい |
流動性・換金性 |
高い |
低い |
物件の管理・維持 |
専門会社に委託 |
自主管理または管理会社に委託 |
利益 |
分配金や売却益 |
賃貸収入や売却益 |
不動産所有権の有無 |
無 |
有 |
収益を得るタイミング |
・分配金は年1〜2回の決算時 ・売却益は売却時 |
・賃貸収入は毎月 ・売却益は売却時 |
J-REITは少額から始められるうえ、実物不動産の管理や運営を専門会社に任せられるため投資初心者もはじめやすい金融商品です。また、実物不動産に比べ流動性が高く、換金もしやすいです。
J-REITの種類
J-REITは、主に投資対象の用途や投資地域に基づいて分類されます。用途に応じた代表的な分類として、「単一用途特化型」と「複数用途型」があります。
単一用途特化型(投資先の用途は1種類)
単一用途特化型REITは、特定の用途に限定して不動産へ投資するJ-REITのことです。例えば、オフィスビル、住宅、商業施設、物流施設など、用途を1つに絞り込むことで専門性の高い運用が可能になります。特定の分野に集中することで高い収益性を目指せる一方、分散投資が難しく、特定の用途に依存するリスクもあります。
複数用途型(投資先の用途は2種類以上)
複数用途型REITは、異なる用途の不動産にバランス良く投資するJ-REITのことです。例えば、オフィスビルと住宅、または商業施設と物流施設など、複数の用途にわたって運用されます。このタイプはさらに「複合型(2種類)」と「総合型(3種類以上)」に分類されます。
複数用途型REITは用途の異なる不動産に投資するため、リスク分散がしやすいのが利点です。しかしその分、単一用途特化型REITと比べて期待リターンが抑えられる傾向があります。
J-REITのメリット
投資家たちにJ-REITが選ばれる理由として、以下のメリットがあります。
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安定・高分配への期待
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流動性が高い
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専門家が運用
それぞれのメリットについてみてみましょう。
安定・高分配への期待
J-REITは、不動産からの賃貸収入を主な分配原資とするため、比較的安定した分配が期待できる傾向があります。
通常の株式会社では、会社が上げた税制上の利益に対して法人税などが差し引かれ、その残りが分配金の原資となりますが、J-REITでは収益からそのまま分配することが可能です。特にJ-REITの場合、投資法人が利益の90%以上を分配に充てるなどの条件を満たすことで法人税が免除されるため、一般的な株式と比べて高い利回りが期待できる傾向にあります。
ただし、分配は市場の状況や物件の稼働率などに左右されるため、常に一定の分配が保証されているわけではありません。
流動性が高い
実物不動産への直接投資と異なり、短期間での換金が可能な点も魅力です。J-REITは証券取引所に上場しており、株式と同様に市場の取引時間内で自由に売買できるため、随時売却して資金を換金できるという高い流動性を持っています。
専門家が運用
J-REITでは、不動産の専門家が物件の選定から管理、賃料の収受などの運営を行うため、実物不動産投資に比べ、専門的な知識や経験が不要で、実物不動産の運用の手間を省ける点が大きなメリットです。
また、実物不動産への投資に比べ少額から投資を始められるため、不動産投資へのハードルが下がります。さらに、複数のJ-REITを保有することで、複数の不動産への分散投資も可能です。
もちろん、J-REITにおいては、プロによる運用であっても常に利益が得られるとは限らないため、投資家自身も運用状況を理解し、適切な判断を行うことが大切です。
J-REITのデメリット・リスク~やめとけと言われる理由は?~
J-REITには、メリットばかりでなく、デメリットやリスクも存在します。
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配当控除は適用対象外
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不動産の災害リスク
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投資法人の倒産リスク
それぞれのリスクについてみてみましょう。
配当控除は適用対象外
J-REITの分配は、個人投資家に対する税制上の優遇措置が限定的です。国内株式投資では、配当所得に対して「配当控除」が適用される場合がありますが、J-REITの分配金はこの配当控除の対象外となります。
通常、株式の配当金や投資信託の分配金には確定申告により配当控除が適用可能ですが、J-REITの分配金は適用外となります。
その理由は、J-REITが利益の90%以上を投資家に分配することで、法人税を事実上免除される仕組みになっているためです。もし配当控除も適用されると、法人レベルと個人レベルでの二重の税優遇措置となり、税制上の公平性を欠くとの観点から適用対象外となっています。
不動産の災害リスク
J-REITは不動産を投資対象とするため、災害に伴うリスクが存在します。地震や台風、洪水などの災害によって投資対象の物件が被害を受ける可能性があり、修繕費用の増加や物件の稼働率の低下がJ-REITの収益性を悪化させることがあります。
災害リスクの軽減策として、投資する物件の地域の災害履歴や耐震性能、保険の適用範囲を確認することが大切です。
不動産投資法人の倒産リスク
J-REITを運営する不動産投資法人が経営破綻する可能性も考慮する必要があります。仮に不動産投資法人が倒産すると、J-REITは証券取引所での上場が廃止され、流動性が失われてしまいます。それに伴い、投資家が希望する価格で売却できなくなる恐れも出てきます。証券取引所ごとに定められた上場廃止基準に抵触する場合、J-REITの市場価値は大きく低下しかねません。
また、倒産に伴い、倒産した不動産投資法人が運営するJ-REITを組み入れていたREIT関連商品にも、多大なる影響を与えることがあります。
J-REITに関連する金融商品
J-REITを購入する際には、まず自分のリスク許容度や投資目的に合った商品を選ぶことが重要です。複数のJ-REITを比較し、物件の立地、運用実績、分配金利回りなどを総合的に検討して、自分に合った銘柄を選びましょう。
関連する金融商品は大きく分けて3つあります。
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個別銘柄REIT
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REIT投資信託
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REIT ETF
それぞれの違いについてみてみましょう。
個別銘柄REIT
国内株式と同様に証券会社を通じて個別銘柄を購入する方法です。個別銘柄REITには、日本のJ-REITと、海外のREITがあります。
J-REITは国内で取引でき、多くのJ-REITは1口単位での取引が可能なため、実物不動産投資に比べ少額から投資を始められます。
個別銘柄への投資はリスクが大きい一方で、運用が成功すれば高い収益が期待できます。リスクをなるべく抑えたい方は、複数のREITに分散投資をするとよいでしょう。その場合は、次のREIT投資信託がおすすめです。
REIT投資信託
投資信託という形で間接的に投資する方法もあります。
REIT型投資信託とは、複数のREITにまとめて投資する投資信託のことです。投資初心者の方にとっては、J-REIT市場全体の動きに連動する指数連動型の投資信託などが分かりやすい選択肢でしょう。
REIT投資信託のメリットは、以下のようなことが挙げられます。
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少額で国内外の複数のREITに分散投資ができる
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個別銘柄の選定や売買の手間がかからない
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複数のREITをひとまとめにし、それを専門家が運用することで、個人で個別銘柄を複数保有するよりも効率的な運用が期待できる
運用期間中は信託報酬などの手数料がかかりますが、分散効果と専門家の運用により、手間をかけずに資産運用を進められる点が魅力です。なお、日本国内で直接購入できるのは主にJ-REITですが、海外REITに投資したい場合は、海外REITを組み入れたREIT投資信託を通じて間接的に投資する方法があります。
REIT ETF
REITへの投資には、ETF(上場投資信託)を利用する方法もあります。REIT ETFとは、取引所に上場している様々な不動産投資信託(REIT)に分散投資する上場投資信託(ETF)のことです。個別銘柄REITや国内株式と同様に証券取引所で売買できます。
REIT ETFは、複数のREIT銘柄を投資対象としており、1つのETFを購入するだけで分散投資を行うことが可能です。また、J-REIT ETFの場合は、REIT投資信託と異なり上場しているため、指値・成行での売買が可能な点が利点です。
ただし、ETFは複数のREIT銘柄で構成されているため、特定のREITだけに投資することはできません。また、個別銘柄に比べ、大きなリターンを見込みにくい点もあります。
投資初心者におすすめなのはREIT投資信託
REIT投資信託は、投資初心者も始めやすい商品です。「少額から投資できる」「分散投資がしやすい」「積立設定が可能」といったメリットがあり、間接的な不動産への投資の第一歩として始めやすい金融商品です。さらに、REIT投資信託を通じて、国内だけでなく海外REITにも手軽に投資することができます。
ただし、投資初心者が始めやすい商品であっても、日々の情報収集や知識のアップデートは欠かせません。東海東京証券では、様々な金融商品の情報をブログやメルマガで提供しています。メルマガの登録を、ぜひご検討ください。
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