
保険で資産運用はあり?活用できる保険やメリット・デメリットを整理
保険は万が一の備えとして利用する商品ですが、中には資産運用の機能を持つタイプもあります。保険には多様な種類があり、それぞれ特徴やメリット・デメリットが存在します。本記事では、初心者の方でも始めやすい保険を活用した資産運用について、その仕組みやポイントを詳しく解説します。
もくじ
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保険の種類と仕組み
保険には「掛け捨て型」と「貯蓄型」があり、貯蓄型が資産運用の機能を持ちます。
- 掛け捨て型保険
掛け捨て型保険は、保障を主目的としており、支払った保険料は万が一の保障に充てられます。そのため、保険期間が終了しても保険料が戻ってくることはなく、シンプルで低コストなのが特徴です。
- 貯蓄型保険
保障機能に加え、保険料の一部を積み立てて運用する仕組みを持っています。満期時には「満期保険金」、途中解約時には「解約返戻金」を受け取れます。保険会社が運用を行い、商品によっては債券や株式などで利益を生み出します。
ただし、運用成果や解約返戻金の額は商品によって異なる他、途中解約をすると、払込金額よりも解約返戻金が少なくなる場合があるという点は理解しておきましょう。
貯蓄型保険で使われる「返戻率」とは?利回りとの違い
保険商品の分野では、「返戻率」という用語がよく使われます。一見、投資や資産運用における「利回り」と似ているように思いますが、これらとは性質が異なります。
- 返戻率
これまで支払った保険料に対する受取額の割合を示します。たとえば「返戻率105%」なら、保険料の総額より5%多い金額が戻ってくる計算です。ただし、返戻率は払込期間を考慮していないため、運用効率の全体像を見るには限界があります。
- 利回り
一定期間における運用成果を示し、時間要素が含まれます。たとえば「年率3%」の場合、1年間で元本に対して3%の利益を得られることを意味します。
以上のことから、返戻率は保険の特徴を把握するための目安、利回りは資産運用の成果を見るための指標という違いがあることがわかります。投資の実際の効果を評価する際には、返戻率だけでなく利回りを見ることが重要です。
資産運用に活用できる貯蓄型保険の種類
保険にはさまざまなタイプがあり、それぞれ特徴や目的が異なります。ここでは資産運用に活用できる主な保険商品について詳しく解説します。
終身保険
・生涯にわたる保障が特徴で、被保険者が亡くなった際に死亡保険金を受け取れる
・解約返戻金は、払込期間満了後、ゆるやかに受取額が増えていき、老後の生活資金としても活用可能(払込期間中から満了後一定期間は解約返戻金の返戻率は基本的に100%未満)
・保険料の支払い方法は、以下の2種類がある
有期払い:一定期間で支払いが完了
終身払い:生涯払い続けるタイプ
一般的に、保険料の払込期間が短いほど解約返戻金の返戻率は高くなります。そのため、保険料を生涯払い続ける終身払いは、一定期間で支払いが完了する有期払いと比較すると、返戻率が100%を超えることが難しくなるので注意が必要です。
低解約返戻金型終身保険
・払込期間中の解約返戻金の額が低く抑えられている分、貯蓄型保険の中でも保険料が安い
・払込期間が満了になると解約返戻金が大きく増加し、総額を上回ることがある
中途解約の場合は注意が必要ですが、払込期間が満了になると解約返戻金が増加するため、長期にわたり契約をすることで利益が期待できる商品といえます。
養老保険
・ 被保険者が亡くなった場合には死亡保険金、満期まで生存した場合には満期保険金が支払われる
・ 死亡保険金と満期保険金が同額で、「万一の場合の保障」と「老後の資金対策としての貯蓄」の両方の役割を持つ
・ 保険料は終身保険等の貯蓄型保険の中でも高め
子どもの進学や退職時期に合わせて保険期間を設定するなど、保険期間が柔軟に選択でき、計画的に資金を活用できます。ただし、先述のように保険料が高めの設定となっている場合が多いため、無理のない支払い計画が大切です。
学資保険
・ 子どもの教育資金を準備するための商品で、進学時期に保険金を受け取ることができる
・ 保険契約者が死亡した場合、以降の保険料が免除される特約がついていることが一般的
学資保険は、教育費の大きな負担を計画的に軽減でき、特に大学進学時に役立ちます。また、解約しない場合、多くの商品で払込保険料を上回る保険金が受け取れます。ただし、医療保障などの特約を追加すると保険料が増えるため、慎重に検討することが大切です。
個人年金保険
・ 老後資金を準備するための商品
・ 一定年齢から保険金を年金として受け取れる
・ 払込期間中に被保険者が死亡した場合、保険料の一部が死亡給付金として給付される仕組みがある
個人年金保険は、以下3種類の年金支払方式があります。
確定年金: 定められた期間だけ受け取ることができ、被保険者の生死に関係なし 有期年金: 指定期間内でのみ受け取ることができ、期間中に死亡した場合は終了 終身年金: 生涯にわたり年金を受け取ることができる
変額保険
・保険会社の運用実績に応じて保険金額や解約返戻金が変動する
・死亡保険金に最低保証が付いた商品が多い
変額保険では、保険会社が保険料を運用します。運用が好調な時は高い保険金を期待できますが、運用が不調な時は元本割れリスクが伴います。
外貨建て保険
・外貨で保険料を払い込み、外貨で運用される
・外貨建ての金利が高い場合、返戻率が上がることがある
外貨建て保険は、通常の円建て保険と比較すると金利水準が比較的高い傾向にありますが、為替変動によるリスクや手数料の影響で、払い込んだ保険料を下回る可能性もあるので注意が必要です。
保険で資産運用を行うメリット
資産運用にも活用できる保険商品は、死亡保障や年金受給といった生活設計を支えながら、保険料の一部を投資に充てる仕組みを持っています。このため、効率的な資産形成を目指すうえでいくつかの利点があります。
「保障」を得られる
保険で資産運用を行う場合、保険本来の役割である保障がセットになっている点が大きな魅力です。株式や債券などの投資では、運用資産を相続財産として遺族に引き継ぐことはできますが、直接的な死亡保障はありません。
所得控除を使える
生命保険の保険料は、「生命保険料控除」の対象となり、所得税と住民税の負担を軽減することができます。新契約(2012年1月1日以降に締結した保険契約)における控除額は以下の通りです。
保険の種類 |
所得税の控除額(上限) |
住民税の控除額(上限) |
一般の生命保険料控除 |
4万円 |
2.8万円 |
介護医療保険料控除 |
4万円 |
2.8万円 |
個人年金保険料控除 |
4万円 |
2.8万円 |
合計(最大) |
12万円 |
7万円 |
旧契約(2011年12月31日以前に締結した保険契約)の保険料も控除の対象となります。旧契約と新契約を併用している場合でも、控除額の合計はそれぞれの上限内で認められます。
死亡保険金は「みなし相続財産」として扱われる
被相続人が生前に加入していた生命保険の死亡保険金は、相続税法上「みなし相続財産」として扱われます。
みなし相続財産とは、本来の民法上の相続財産ではないものでも、相続したとみなされる財産のことです。具体的には、被相続人が亡くなったタイミングで受け取ることができる財産(死亡保険金や死亡退職金等)を指します。これらは、亡くなった被相続人ではなく、保険会社や勤務先から受け取るものですが、相続したとみなされ税金が課されます。
ただし、死亡保険金には非課税枠が設けられているため、限度額まで非課税とすることができます。非課税限度額の計算式は以下の通りです。
非課税限度額=500万円×法定相続人の人数
法定相続人が3人の場合、非課税限度額は1,500万円となるので、この1,500万円を超えた金額に対し相続税がかかることになります。
保険で資産運用を行うデメリット
保険を使った資産運用には、デメリットも存在します。これらを理解し、自分のリスク許容度を踏まえたうえで保険を資産運用の一環として活用することが重要です。
解約時期や商品によっては元本割れの可能性も
短期間のうちに保険契約を解約する場合、解約返戻金が少なく、払い込んだ保険料を下回る場合が多いです。これは、初期の保険料の大半が保険会社の手数料や運営費に充てられているからです。そのため、保険で資産運用する場合、基本的には長期の運用となることを前提とすると良いでしょう。
また、保険の中でも資産運用の側面が強い商品は、元本割れのリスクが高くなります。例えば、前述したとおり外貨建て保険は為替変動の影響を受けるため、円安時に換金すると元本割れする可能性があります。運用の成果次第で高いリターンが期待できる一方で、損失のリスクもあることを理解したうえで商品を選ぶことが大切です。
仕組みが複雑な商品もある
保険商品に詳しくないと、仕組みを理解しにくい保険もあります。保障と資産運用を兼ね備えた保険商品では、保険料の一部が保障に、もう一部が資産運用に割り当てられる仕組みですが、保険料の配分や運用成績が分かりにくいケースも見られます。
さまざまな投資方法の一つと捉えるのがベター
保険は資産運用だけでなく、リスクへの備えとしての側面も重要です。投資信託や株式と組み合わせて、多角的な資産運用を目指すと良いでしょう。契約前にはリスクとリターンをよく検討し、必要に応じて専門家の助言を受けてください。
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