株式市場に上場しているETF(上場投資信託)は、投資を始めたばかりの方にもおすすめできる金融商品の1つです。ETFもその他の投資信託同様、商品によって運用方針や投資対象が様々ありますが、中には低コストで手軽に取引できる商品や、分散投資の効果が期待できる商品もあります。
本記事では、ETFの概要や商品の特徴、初心者の方におすすめできる理由や注意点について、分かりやすく解説します。
もくじ
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ETFとは「上場している投資信託」のこと
ETF(Exchange Traded Funds)は、投資信託の一種で、株式のように証券取引所に上場しています。通常の投資信託は販売会社を通じて購入するのが一般的ですが、ETFは取引所に上場しているため、株式のように証券会社を通じて市場で売買を行えます。
ETFと投資信託・株式の違い
ETFは、運用の仕組みは投資信託と非常に似ていますが、取得方法や取引形態においては株式に近い特徴を持っています。ここでは、ETFと投資信託・株式の違いを整理してみました。
投資信託とETFの基本的な仕組み
投資信託は、複数の投資家から資金を集め、その資金をファンドマネージャー(金融の専門家)が株式や債券などに投資して運用する金融商品です。ETFも基本的には同じ仕組みを持ちますが、上場しているため、国内ETFは株式と同様にリアルタイムでの取引が可能です。
投資信託とETFの種類
どちらも運用スタイルによって、次の2つの種類があります。
- インデックス型:特定の指数に連動する運用成果を目指して運用(例:日経平均株価)
- アクティブ型 :特定の指数を上回る成績を目指して運用
2024年9月現在、一般的な投資信託は約5,800本、ETFは約300本存在しており、市場規模では投資信託のほうが大きいです。
【参考】投資信託の全体像(純資産総額・ファンド本数)直近データのバックナンバー|一般社団法人 投資信託協会
ETFと投資信託の主な違い
- 取引時間:国内ETFは株式と同様にリアルタイムでの取引が可能なのに対し、
投資信託は1日1回基準価額が算出され、それをもとに取引します。 - 信用取引:ETFは信用取引が可能ですが、投資信託はできません。
- 分配金:ETFは分配金を自動で再投資できませんが、投資信託は再投資型を選択できる場合があります。
ETFと株式の違い
ETFの多くはインデックス型商品です。日経平均株価やTOPIX、S&P500などの指数に連動し、指数の値動きに応じた運用成果を目指します。
ただ近年では、アクティブ型ETFも登場し、投資戦略の幅が広がっています。
上記を含め、それぞれの違いを下表にまとめました。
株式 |
ETF |
投資信託 |
|
上場・非上場 |
上場 |
非上場 |
|
取引価格 |
市場価格 |
基準価額 (1日1回算出) |
|
購入窓口 |
証券会社 |
証券会社、銀行などの販売会社 |
|
注文方法 |
証券会社を通じて指値/成行注文 |
販売会社を通じて 基準価額をもとに購入 |
|
取得時の費用 |
証券会社の売買委託手数料 |
販売手数料(ファンド・販売会社ごとに異なる) |
|
信託報酬 |
なし |
0.1〜1%程度 |
0.2〜3%程度 |
売却・解約時の費用 |
証券会社の売買委託手数料 |
信託財産留保額や換金手数料がかかる場合あり |
|
分配金・配当 (税金) |
配当金 (課税対象) |
分配金 (課税対象) |
・普通分配金(課税対象) ・元本払戻金(非課税) |
取引可能時間帯 |
証券取引所の取引時間 |
当日申込は9:00〜15:30 |
※2024年11月5日より、東京証券取引所の取引終了時間が15:00から15:30に変更されています。
※取引終了時間は商品によって異なっております。
ETFの種類は大きく2つ
ETFには、さまざまな種類が存在します。投資対象も国内外の株式や債券、コモディティなど多種多様です。上場している場所で分類すると、国内ETFと海外ETFの2種類に分けられます。
主なETFの種類
投資対象別のETFの種類は以下の通りです。
種類 |
内容・特徴 |
国内外株式 |
・日経平均株価やS&P500など、各国の株価指数に連動するETF ・高配当や業種別など、特定のテーマに基づく商品もあり ・外国株式ETFには、日本円に対する為替ヘッジの有無を選べるものもあり |
国内外債券 |
・日本や米国など、国や地域ごとの債券市場を反映する指数に連動するETF ・外国債券ETFには、日本円に対する為替ヘッジの有無を選べるものもあり |
国内外REIT (不動産) |
・投資家から集めた資金を主に不動産(REIT等)で運用するETF ・一般的に配当利回りが高いことが多い |
コモディティ (商品) |
・金やプラチナなどの貴金属や原油価格などコモディティ(商品)指数に連動するETF ・株式や債券と値動きが異なることが多い |
レバレッジ型 |
・特定の指標の変動率に正の倍率をかけた値動きに連動するETF ・相場が上昇する局面でより高いリターンを狙う |
インバース型 |
・特定の指標の変動率に負の倍率をかけた値動きに連動するETF ・相場が下落する局面で収益を狙う |
国内ETFと海外ETFの違い
国内ETFと海外ETFでは、以下のような特徴の違いがあります。
国内ETF |
海外ETF |
|
投資対象 |
複数の株式・債券・REITなど |
|
銘柄数 |
約300本 |
証券会社により異なる |
取引時間 |
東京証券取引所の取引時間 |
米国などの現地の取引時間 |
取引通貨 |
日本円 |
米ドルなどの現地通貨 |
取引場所 |
ほぼ全ての証券会社 |
取り扱いのある証券会社のみ |
信用取引 |
可能(一部銘柄のみ対応) |
証券会社によっては可能 |
売買時の費用 |
国内株式と同様の売買委託手数料 |
外国株式と同様の売買委託手数料、 為替手数料 |
保有時の費用 |
信託報酬 |
経費率 |
分配受取 |
日本円 |
米ドルなどの現地通貨 |
収益 |
売却益・分配金 |
売却益・分配金・為替差益 |
課税 |
収益の20.315% |
※株式と同様に、NISA口座で購入した場合の売却益・分配金(株式数比例配分方式での受け取り)は非課税になります。
海外ETFはすべての証券会社で購入できるわけではありません。東海東京証券では、100本以上の海外ETFを取り扱っています。(2024年11月基準)
また、基本的に外貨建てで取引されるため、売買時に為替手数料が発生します。タイミングによっては為替差益や為替差損が生じる可能性があります。
さらに、海外ETFの分配金は、米国ETFであれば10%が現地で税金として徴収され、その後、日本で20.315%の税金が課されるため、二重課税となる場合があります。ただし、確定申告を行うことで外国税額控除を適用でき、一部の税金が還付される可能性があります。
※海外ETFをNISA口座で購入した場合、外国税額控除をすることができません。
ETFが初心者にもおすすめできる6つの理由
ETFは投資初心者にもおすすめできる金融商品です。主な理由は以下の6つです。
- 低コストで保有・売買できる
- 分散投資がしやすい
- リアルタイムで取引可能
- 値動きがわかりやすい
- 高い分配金も狙える
- 元本払戻金(特別分配金)がない
1.低コストで保有・売買できる
ETFの大きな特徴の1つは、低コストで保有や売買ができる点です。
一般的に、ETFは通常の投資信託に比べて信託報酬などの保有コストが低い傾向があります。投資信託では販売会社への手数料や事務費用がかかりますが、ETFはそれらのコストが低いため、投資家にとって負担が軽くなります。例えば、日本株式に連動するETFの信託報酬は、年率0.1%前後と低い水準です。
さらに、インターネット取引の普及により、国内株式等の売買委託手数料も大幅に低下しました。このようなコストの低下によって、ETFは投資初心者にも手軽に始めやすい金融商品といえます。
2.分散投資がしやすい
ETFは、少額の資金で複数の銘柄に分散投資ができる金融商品です。
株式を個別に購入する場合、数百万円単位の資金がないと、十分な分散投資を行うのは難しいことがあります。例えば、100万円の資金があっても、1銘柄で100万円ほどする株式もあります。もし投資資金を1つの銘柄に集中させ、その銘柄が大きく値下がりすると、損失も大きくなってしまいます。
その点、ETFは指数に連動するように設計されているため、その指数を構成する銘柄に自動的に分散投資できます。例えば、日経平均株価に連動するETFであれば、日経平均を構成する225銘柄に分散投資しているのと同じ効果が得られます。
さらに、ETFは数千円からでも幅広い分散投資が可能であるため、1つの銘柄に投資するよりもリスクを低く抑えられる点が魅力です。
3.リアルタイムで取引可能
国内ETFは株式と同様に取引所で売買できるため、リアルタイムでの取引が可能です。
一般的な投資信託は、基準価額が1日1回しか算出されず、その基準価額での1日1回の設定・解約しかできません。一方、ETFは取引所で売買されるため、取引所の取引時間中であればいつでも注文を出して売買できます。
例えば、朝の相場の変化を見ながら、その日の売買戦略を立てて購入できます。また、相場の変動に合わせて即座にポジションを調整することもできます。
さらに、指値注文や成行注文といった注文方法が使えるため、希望するタイミングや価格で取引できます。
4.値動きがわかりやすい
ETFは指数の動きに連動するように設計されているため、値動きが分かりやすいという利点があります。
特にインデックス型のETFは、対象となる指数の動きを反映するよう運用されています。例えば日経平均株価やTOPIXと連動するETFであれば、これらの指数の値動きを把握しておくことで、ETFの値動きもおおよそ予想できます。
5.高い分配金も狙える
配当利回りの高い銘柄を選んで構成されたETFは、高い分配金を期待できます。また、一部の銘柄では、年に4回ほど分配金を受け取ることができます。
6.元本払戻金(特別分配金)がない
一般的な投資信託では、分配金には「普通分配金」と「元本払戻金(特別分配金)」の2種類があります。
普通分配金は、分配後の基準価額が個別元本を上回っている場合に支払われ、収益にあたるため課税対象となります。
対して、元本払戻金は、分配後の基準価額が個別元本を下回っている場合に支払われるもので、元本の一部が払い戻される形になるため非課税です。タコが自分の足を食べる様子に例えて「タコ足配当」とも呼ばれ、元本が減少することで複利効果が薄れるなどのデメリットがあります。
ETFにはこの元本払戻金がないため、ETFの分配金は全て収益部分(配当、受取利息その他これらに類する収益)からなる普通分配金のみです。投資元本を維持したまま、指数の値上がり益と分配金収入を享受できるのが大きなメリットです。
リスクもある?ETFの注意点とは
ETFは株式や債券などに効率よく投資できる便利な金融商品ですが、以下のようなリスクも伴います。
「市場価格」と「基準価額」とで乖離が生じる
ETFの価格は、「市場価格」と「基準価額」という2つの指標で表されます。
市場価格とは、株式と同じように取引所での売買価格のことです。需要と供給によって決まるためリアルタイムで変動し、マーケットの状況を反映します。
一方、基準価額とは、ETFが保有する株や債券などの資産の価値をもとに計算された価格です。運用コストなども考慮されているため、ETF自体の資産価値に近い価格だと考えて差し支えありません。
通常、市場価格と基準価額はおおむね連動して推移しますが、状況によっては2つの指標がずれる場合があります。例えば、市場の取引が活発でないときや、大きなニュースがあったときなど、ETFの需給が極端に偏ると、市場価格が基準価額よりも高くなったり、逆に低くなったりすることがあります。
ETFの取引をする際は、この市場価格と基準価額の違いに気をつける必要があります。どちらの価格が適切なのかを判断しながら、売買のタイミングを見極めることが大切です。
自動積立投資が行いにくい
一般的な投資信託では、運用会社が提供する自動積立サービスを利用して、定期的な積立が可能です。しかし、ETFの場合は証券会社を通じて売買するため、自動積立ができるかどうかは証券会社によって異なります。
現状、全ての証券会社がETFの自動積立サービスを提供しているわけではありません。そのため、ETFを投資対象にした場合、積立投資を手動で行わなければいけない場合があります。
また、自動積立に対応している証券会社でも、設定できる積立金額や積立頻度に制限があることがあります。柔軟に設定できない可能性もあるため、ETFで自動積立を検討する際は、事前に各証券会社の条件を確認しておくことが大切です。
分配金は自分で再投資しなければならない
一般的な投資信託では、分配金を自動的に再投資する設定が可能です。この仕組みにより、運用資金が増え、収益もそれに応じて増える「複利効果」が期待できます。
しかし、ETFには分配金を自動で再投資する仕組みがありません。分配金は決算時に現金で支払われ、再投資を希望する場合は、その後に自分でETFを再度購入する必要があります。さらにETFは、商品ごとに異なる売買単位が設定されており、分配金が最低売買金額(売買単位×市場価格)に満たない場合には再投資が行えません。
このような手間がかかるため、ETFは投資信託に比べ、複利効果を十分に得にくいことがあります。特に、長期的な資産形成を目指す投資家にとっては、やや不利な点かもしれません。
投資信託と違いバランス型ファンドが少ない
バランス型ファンドとは、株式や債券、不動産など複数の資産を組み合わせ、自動的にポートフォリオをリバランスすることで、手軽に分散投資ができる金融商品です。
しかし、ETFは特定の資産クラスに焦点を当てた商品が多いため、同様の分散投資を行うには複数のETFを保有し、投資家自身が定期的にリバランスを行う必要があります。
とはいえ、最近では複数の資産クラスを組み合わせたバランス型ETFも登場し始めており、今後さらに多くのバランス型ETFの提供が期待されています。
自分でリバランスを行うのが難しい場合は、プロに運用を任せられるバランス型の投資信託をポートフォリオに加えるのも1つの方法です。状況に応じて、ETFと投資信託を使い分けるのもよいでしょう。
流動性には要チェック!
一般的な投資信託と同様に、ETFにも流動性リスクがあります。
市場の需給によっては売買が成立しない、希望する価格で取引できないことがあるため、売買の際には十分な注意が必要です。
また、取引所に上場している上場投資信託ですので、株式と同様に上場廃止となる場合もあります。
ハイリスク・ハイリターンなレバレッジ型・インバース型ETF
レバレッジ型・インバース型ETFは、計算の基となる指数の日々の上昇率・下落率に一定の倍率を乗じた数値を対象指数としており、通常のETFとは異なる特性を持っています。
例えば、日経平均株価の日々の値動きの2倍の値動きを目指すレバレッジETFは、日経平均が1%上昇した日には、2%の上昇になることを目指して運用されます。
レバレッジ型、インバース型ともに市場の変動により、大きな利益を得られる可能性がありますが、大幅に投資元本を損失するおそれもありますので、特に〇倍型などの商品を運用する際には、注意が必要です。
【参考】レバレッジ型・インバース型ETF等の投資リスクについて | 東海東京証券 (tokaitokyo.co.jp)
ETFの買い方を簡単に解説
ETFは株式と同じく、証券会社の口座を通じて購入できます。初めて投資をする方でも、手順は非常にシンプルです。ここでは、ETFの買い方を4つのステップで説明します。
国内ETFの買い方
以下の4つのステップに沿って、国内ETFの購入方法をご紹介します。
ステップ1:証券会社の口座を開設する
まず、ETFを売買するために証券会社で口座を開設する必要があります。口座開設時には、マイナンバー確認書類、本人確認書類の提出などが必要です。オンラインで簡単な口座開設手続きを行うことも可能です。
ステップ2:投資するETFを選ぶ
口座開設が完了したら、次は投資するETFを選びます。自分の投資目的やリスク許容度に合ったETFを探し、慎重に銘柄を決定しましょう。
ステップ3:注文を出す
投資するETFが決まったら、口座への入金を行い、証券会社のWebサイトやアプリから買付注文を出します。対面証券では電話でも注文が可能です。成行注文や指値注文といった注文方法が選べます。購入数量や価格を決めて、注文を確定しましょう。
ステップ4:決済・口座管理
注文が約定すると、購入代金が口座から引き落とされます。購入したETFは証券会社の口座で管理されます。定期的に保有状況を確認し、必要に応じて入れ替えや売却を行いながら、最適なポートフォリオを維持しましょう。
米国ETFの買い方
米国ETFは、国内ETFと同様に証券会社の口座で購入できます。以下の4つのステップに沿って、米国ETFの買い方を解説します。
ステップ1:証券会社の口座を開設する
米国ETFを購入するには、海外ETFを取り扱っている証券会社の口座を開設する必要があります。最近では、ネットやアプリから簡単に口座を開設できる証券会社が増えています。
ステップ2:投資するETFを選ぶ
次に、どのETFに投資するかを検討しましょう。投資対象の市場や業種、運用方針を確認し、投資目的やリスク許容度に合った銘柄を選びます。ETFの運用方針なども慎重に確認し、自分に適した投資対象を選定しましょう。
ステップ3:注文を出す
購入するETFが決まったら、口座への入金を行い、証券会社のWebサイトやアプリから買付注文を出します。対面証券では電話でも注文が可能です。円貨、もしくは外貨での決済が可能です。注文画面で購入数量や価格を入力し、注文を確定させます。
ステップ4:決済・口座管理
注文が約定すると、購入代金が口座から引き落とされます。保有した米国ETFは、証券会社の口座で管理されます。定期的に保有状況を確認し、必要に応じて売却や入れ替えを行い、最適なポートフォリオを維持しましょう。
※注意点
米国ETFの取引には、取引時間の制限や為替リスクがあるため、これらに留意しながら投資を行うことが重要です。
まとめ
ETFは、株式市場に上場している投資信託です。比較的低コストで手軽に取引でき、分散投資も少額から可能なため、投資初心者の方にもおすすめできる金融商品です。
ただし、自動積立や再投資がしづらいといった弱点もあり、メリットばかりではありません。ETFの特徴をよく理解した上で、ポートフォリオを構築することが重要です。
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