債券投資の仕組みとは?メリット・デメリットや選び方のポイントを解説

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#投資初心者

公開日:2025/01/10 更新日:2025/01/10

 

債券投資は、株式投資と比べてリスクが低く、安定した運用が期待できるとされていますが、その仕組みは初心者にとってやや難解に感じられるかもしれません。ここでは、「債券とは何か」「投資方法」「債券投資のメリット・デメリット」について詳しく解説します。

なお、本記事では個別債券(生債券)への投資を前提としており、債券を投資対象としたETFや投資信託とは異なります。また、債券投資の代表例として米国債や日本国債、普通社債を想定して説明をします。

 

もくじ

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債券投資とは?そもそも債券ってなに?

債券投資は、国や企業に資金を貸し、利息を得ながら元本の返済を待つ資産運用方法です。収益性も少しありつつ安全性も高いことから、幅広い投資家に利用されています。ここでは、債券の基本を見ていきます。

 

債券とは

債券とは、国、地方公共団体、または民間企業などが資金を調達するために発行する有価証券です。投資家が債券を購入することで、発行体は決められた利子を定期的に支払い、償還期限(満期日)には元本(額面金額)を返済することを約束します。

簡単にいえば、債券は「借用証書」に相当し、投資家が債券を購入する行為は「発行体にお金を貸す」ことを意味します。発行体はこの借入金を元に、さまざまな事業やプロジェクトを進めます。

 

債券の種類

債券には、発行体によって以下のような種類があります。

 

種類

発行体

公共債

国、地方自治体、政府関連機関など

民間債

民間企業、金融機関など

外国債券

外国政府、外国企業、国際機関など

 

公共債は、国や地方公共団体、政府関連機関が発行する債券です。国債は国家の信用力を背景にしており、比較的安全性が高いとされています。地方債は、地域のインフラ整備や福祉サービスなど公共事業の資金調達に利用され、一般的に信用リスクが低く安定的な利回りが期待できます。

民間債は、銀行や証券会社が発行する金融債、および製造業やサービス業などが発行する社債を含みます。民間債の利回りは発行体の信用力に左右され、信用力が高い企業の債券は比較的低い利回りで取引される一方、信用力が低い企業の債券は高利回りで取引される傾向にあります。

外国債券は、発行体、発行市場、通貨のどれかが外国である債券のことです。外国債券には、為替リスクなど国内債券にはないリスクが伴います。

 

債券投資で利益を得られる仕組み

債券投資によって得られる利益は、利息と売却益および償還差益の3種類です。債券は、保有期間中に利息を受け取れるだけでなく、売却時や満期償還時にも利益を得られる可能性がある点が特徴です。

 

保有して利息を得る

債券は、あらかじめ定められた利率で定期的に利息が支払われる「固定利付債」が一般的です。固定利付債は、保有期間中、年1回や年2回などの決まったタイミングで利息を受け取り続けることができます。

ただし、債券には固定利付債以外にもさまざまな種類があります。例えば、「変動利付債」は、市場金利の変動に応じて利率が変わります。また、「割引債(ゼロクーポン債)」は、利金の支払いがない代わりに額面金額より低い価格で発行され、償還時に額面との差額が利益となります。

変動利付債は、金利上昇局面では高い利息を受け取れる可能性がある一方、金利下落局面では受け取る利息が少なくなるリスクが伴います。

 

購入時より高く売って売却益を得る

債券は、株式と同様に、購入時の価格より高く売却することで売却益を得ることが可能です。債券の価格は、市場金利の変動や発行体の信用力の変化に応じて変動するため、適切なタイミングで売却できれば利益を確定することができます。

ただし、債券は株式ほど即座に取引できるわけではありません。多くの債券取引は証券会社を通じて売買する店頭取引で行うため、取引が成立するまでに時間がかかる場合があります。

また、市場環境の悪化によって流動性が低下すると、希望するタイミングでの売却ができなかったり、望んだ価格での売却が難しくなるリスクもあります。特に、経済不安や市場の混乱時には、債券を売却したくてもできないケースが生じることがあります。

さらに、商品によっては中途解約を原則禁止している場合もありますので、よく確認することが必要です。

 

満期まで保有して償還差益を得る

債券を満期まで保有することで、購入時の価格と額面金額との差額が償還差益となり、利益を得られる場合があります。額面金額とは、発行時に設定され、満期償還時に支払われる金額のことです。購入価格が額面金額を下回っている場合、その差額が利益として確定します。

ただし、市場金利の変動により、購入時の価格が額面金額を上回ることもあります。この場合、満期償還で受け取る額面金額が購入価格を下回り、償還差益が得られないばかりか、損失が生じる可能性もあります。

一般的に、債券を満期まで保有すれば元本(額面金額)が償還されるといわれていますが、これは発行体の信用が維持されることが前提です。発行体が倒産するなどの信用リスクが生じた場合、元本全額が回収できなくなるリスクがある点に注意が必要です。

 

債券価格と市場金利はシーソーのような関係性?

金利と債券価格

市場における債券価格と金利の関係は、反比例的な関係にあります。一般的に、市場金利が上昇すると債券価格は下落し、市場金利が低下すると債券価格は上昇する傾向があります。

市場金利が上昇すると、新しく発行される債券(新発債)が、高い利回りで提供されるようになった場合、投資家は新発債を好むようになり、低い利回りの古い債券(既発債)の価値が下がります。

逆に、市場金利が下がると、既に発行された債券のほうが相対的に高い利息を得られるようになります。結果、既発債の需要が高まり、債券価格も上昇します。

ただし、この関係はあくまで傾向であって、必ずしも金利の変動と価格変動が完全に連動するわけではありません。債券の価格は、金利の変動に加えて、発行体の信用力や満期までの残り期間などの影響も受けるためです。例えば、発行体の経営が悪化した場合、金利が変わらなくても価格が下がることがあります。また、満期までの期間が長い債券は金利変動の影響を大きく受けやすく、短期間の債券はその影響が小さくなります。

 

債券投資のメリット

債券投資は、株式投資に比べて収益が比較的安定しているとされ、初心者の方にも取り組みやすい投資手法といえます。これから、代表的なメリットを紹介します。

償還のスケジュールが決まっている

株式では、「いつ株価が上がるか」「どの程度の値動きがあるか」を予測するのが難しく、価格変動が大きいこともあります。しかし、債券はあらかじめ利率と満期時の償還額が決まっているため、将来の収益を比較的計算しやすいのが特徴です。

例えば、固定金利5年の債券を100万円で購入し、年2%の利率が設定されているとします。この場合、税率20.315%分が徴収され、毎年約1万6千円の利息を受け取ることができ、5年後には100万円の元本も返済されます。

また、利息の受け取りの時期や償還期限(満期日)が確定しているため、投資計画が立てやすく、生活の中で資金の使い道をあらかじめ計画することが可能です。

ただし、前述の通り、市場金利の変動リスクには注意が必要です。市場金利が上昇した場合、新しい債券の利率が上がるため、保有している債券の価値が下がることがあります。しかし、中途売却することなく、満期まで保有すれば元本は返済され、損失を回避できるため、長期的な視点で安定した収益を得たい方に向いているでしょう。

 

分散投資に適している

債券は、株式に比べて価格の変動が小さいという特徴があり、分散投資に向いた金融商品とされています。一般的に、株式は値動きが大きく、景気の変動によって大きな損失を被ることもあります。しかし、債券は株式よりも価格の変動が小さく、ポートフォリオ全体のリスクを抑える効果があります。

例えば、株式と債券を組み合わせたバランス型の投資信託を利用することで、株価下落時、債券の安定性が株価変動の影響をを和らげ、投資信託の下落率を抑えることが期待できるでしょう。株式のみの投資信託に比べ、経済が不安定な局面でも損失が小さく抑えられる可能性があり、リスクヘッジとして債券を活用するのは有効な戦略です。

また、国債、地方債、社債など、さまざまな発行体の債券に分散投資することで、リスクをさらに分散できます。発行体の信用力や特性の違いによって、債券の価格変動は異なるため、複数の種類の債券を組み合わせることで、ポートフォリオの安定性を高めることができるでしょう。

このように、債券は株式とは異なる動きをするため、分散投資を考える上で重要な金融商品といえます。

 

債券投資のデメリット

債券投資は初心者向きだとされますが、メリットだけでなくデメリットも理解しておくことが重要です。投資を行う際には、さまざまなリスクを考慮し、自分の投資方針に合った判断をしましょう。

 

信用リスクがある

債券投資で避けられないリスクの一つに、信用リスクがあります。信用リスクとは、発行体の財務状況の悪化や信用力の低下によって、債券の元本や利息が支払われなくなるリスクのことです。

例えば、企業が発行する社債の場合、企業の収益悪化や経営不振によって信用力が低下すると、社債の価値が下落することがあります。さらに、発行元が倒産した場合、社債が償還されず、投資した金額が失われる可能性もあります。

信用リスクの判断には、債券の格付けが参考になります。格付けは、専門機関が発行体の信用力を分析し評価したもので、例えば「AAA」などの高い格付けは信用力が高く、リスクが低いことを示します。格付けが低い債券は利回りが高い傾向がありますが、その分信用リスクも高まる点に注意が必要です。

 

ローリスク・ローリターンである

債券は一般的に「守りの資産」とされますが、リスクが低い分、リターンも低い傾向にあります。これがいわゆる「ローリスク・ローリターン」の特性です。

例えば、2024年12月時点では、個人向け国債(変動10年)の適用利率は税引前で年0.71%、個人向け社債の利率も多くが1%台にとどまっています。将来的に金利水準が変動する可能性はありますが、現状では債券は大きな収益を期待する投資商品ではありません。

金融商品の安全性や安定性を重視する投資家にとって、債券は魅力的な選択肢ですが、高い収益を目指す投資家には物足りなく感じられる場合もあります。そのため、投資目的やリスク許容度に応じて、債券だけでなく他の資産とも組み合わせたバランスの良いポートフォリオを作ることが重要になります。

 

外貨建ての債券は為替変動リスクも受ける

外貨建ての債券に投資する場合、その債券は投資先国の通貨建てで運用されるため、為替変動リスクが伴います。投資国の通貨価値が円に対して変動すると、その変動が投資成果に影響を与えます。

例えば、投資先国の通貨が円に対して下落した場合、債券を円に換算して売却する際は、想定より少ない金額となり、損失が発生する可能性があります。一方で、投資先国の通貨が円に対して上昇すれば、同じ債券でも売却時には円換算でより大きな利益を得られる可能性があります。

このように、外貨建ての債券では為替相場の変動が直接的な利益や損失に影響を与えるため、為替の動向を把握することが重要です。

 

債券を選ぶときはここをチェック!

債券に投資する際は、自分の投資目的やリスク許容度に合わせて適切な商品を選ぶことが重要です。以下に、債券を選ぶ際に注目したいポイントを紹介します。

 

額面金額と償還日

額面金額とは、償還日に投資家に戻ってくる金額を指します。例えば、額面金額50万円の債券は、満期日に50万円が返済されます。ただし、債券の種類によって最低購入金額が異なるため、投資前に確認することが必要です。

償還日は、債券が償還されて元本(額面金額)が返ってくる日です。どの程度の期間、資金を債券に投じる必要があるかを把握するために、償還日を必ず確認しましょう。

利率や額面金額、リスクが同じ条件の債券であれば、償還までの期間が短い方が資金が早く回収できるため、効率的に感じるかもしれません。しかし、短期間の債券は利回りが低い傾向もあるため、投資の目的に合わせた選択が大切です。

 

利率と利回り

利率とは、債券の額面金額に対する年間の利金(利息)の割合を指します。これは、発行時の市場金利の水準や発行体の信用度に応じて決められ、固定金利と変動金利の2種類があります。

一方、利回りは実際にいくら投資してどれだけの利益が得られたかを示す指標です。特に、既発債を購入する場合は、その時点での市場価格で購入するため、額面金額と異なる価格で取引されます。したがって、購入価格を基準に利息や償還時の利益を計算する必要があり、これが利回りに反映されます。

 

【利回りの計算方法】

利回り(%) = 年間収益÷投資金額 ×100

 

例えば、額面金額100万円の債券を95万円で購入し、利率2%で5年間保有する場合を考えてみましょう。

 

  • 利息収入: 100万円 × 2% × 5年 = 10万円
  • 償還差益: 100万円 − 95万円 = 5万円
  • 年間収益: (10万円 + 5万円) ÷ 5年 = 3万円

計算式に従い、利回りは以下の通り算出できます。

  • 利回り = 3万円 ÷ 95万円 × 100 = 約3.15%

債券投資を検討する際は、利率だけでなく利回りも確認しましょう。

 

発行体と格付け

前述の通り、発行体とは資金調達のために債券を発行する主体のことを指し、国、地方公共団体、民間企業などがあります。発行体ごとに財務状況や経営の健全性が異なるため、それによって債券の信用力やリスクが変わります。

発行体の信用力を確認するために、信用格付けが参考になります。信用格付けは、格付け機関が発行体の債務履行能力を評価し、付与する指標です。代表的な格付け機関には以下があります。

 

  • R&I(格付投資情報センター)
  • JCR(日本格付研究所)
  • Moody's(ムーディーズ)
  • S&P(S&Pグローバル・レーティング)
  • Fitch(フィッチ・レーティングス)

 

一般的に、R&Iが発表する指標では、格付けがBBB以上の債券は「投資適格債」とされ、信用力が高いぶん、利回りが低く設定されています。一方で、BB以下の債券は「ハイイールド債」もしくは「ジャンク債」と呼ばれ、元本割れのリスクが高いぶん、利回りは高く設定されています。リスクを取って高収益を狙いたい投資家には魅力的な選択肢となることもあります。

 

新発債か既発債か

債券には、新たに発行される新発債と、既に市場で流通している既発債の2種類があります。

新発債は発行される際に条件が決められており、一定の募集期間を経て販売されます。このため利率や償還金額が固定され、収益が予測しやすいことが特徴です。あらかじめ計画的な投資ができる一方、募集期間を逃すと発行時以外に購入できないという制約があります。

既発債は、すでに発行されて市場で取引されている債券で、いつでも購入が可能です。ただし、取引市場の需給によって価格が日々変動するため、購入価格と利回りが常に変わります。収益を予測するのが難しくなる一方、多様な銘柄から選べるという柔軟性が魅力です。

このように、新発債は収益が読みやすく、既発債は取引の自由度が高いといった違いがあります。運用期間や収益の予測のしやすさを考慮し、自身の投資目的に合った債券を選ぶことが大切です。

 

さいごに

債券は株式投資に比べて比較的リスクが低く、投資初心者にも取り組みやすいとされています。

ただし、元本保証があるわけではなく、信用リスクや価格変動リスク、為替リスク、流動性リスクなどにより、思うように利益を得られないこともあります。

このようにいうと難しく感じるかもしれませんが、基本的な知識を押さえておけば、初心者の方でも安心して始められる金融商品の一つです。長期的に安定した収益を得るためには、継続的な学習と情報収集が重要になります。

東海東京証券では、これからも債券を含むさまざまな金融商品の活用法などを分かりやすく発信していきます。ぜひ継続的にご活用いただき、投資のスキルアップにお役立てください。

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