
投資信託の重要日付「約定日」「申込日」「受渡日」の違いを整理!
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公開日:2025/03/07 更新日:2025/03/07文/阿部 司 日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
投資信託の売買には、3つのポイントとなる日付があります。「申込日」「約定日」「受渡日」です。特に約定日は、購入単価の決定に関わるためとても大切です。
投資信託の日付は、証券会社の営業日や市場の休場日によってタイムラグが生じることがあります。想定外の事態を避けるためにも、取引のスケジュールを正しく理解しておきましょう。
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その前に...投資信託には国籍がある?
投資信託には、人間と同じように国籍があります。どの国に登録されて、どの国の法律に従って運営・管理されるかで、投資信託ごとの国籍が決まります。
投資信託には、日本の法律に基づいて設定・運用され日本国籍を持つ国内籍投資信託と、海外で設定され海外の国籍を持つ外国籍投資信託があります。海外を投資対象とする投資信託であっても、日本の法律に基づいて設定・運用されるものは国内籍投資信託に分類されます。
本記事では、国内籍投資信託を購入した場合のスケジュールについて解説します。
投資信託の「申込日」「約定日」「受渡日」の違い
投資信託を購入、もしくは売却すると、「申込日→約定日→受渡日」の順に進みます。それぞれの日付で何が行われているのでしょうか?
申込日:売買注文をした日
申込日とは、投資信託の注文を出した日のことです。
投資信託それぞれに注文の締切時間(カットオフタイム)が設定されており、時間までに注文を出すと、その日が申込日となります。締切時間を過ぎて注文を出した場合は、翌営業日が申込日となります。
締切時間は、投資信託の販売会社である金融機関等や投資信託(ファンド)ごとに異なるため、具体的な時間は各社の案内を確認してください。
約定日:取引が成立した日
約定日とは、投資信託の売買取引が正式に成立した日のことです。投資信託は株式のようにリアルタイムで取引が成立するわけではなく、注文後に基準価額が決定され、その後に取引が確定します。
国内資産のみを投資対象とする投資信託では申込日と約定日が同じ日となり、海外資産を含む投資信託では、時差や海外市場の休場日の影響で、取引成立が翌営業日以降となります。
詳細は、交付目論見書や購入する金融機関等の公式サイトで確認しましょう。
受渡日:資金や商品が受渡しされる日
受渡日とは、投資信託の取引が最終的に完了し、資金や投資信託の受渡しが行われる日のことです。国内籍投資信託の場合、一般的に約定日の2〜5営業日後に受渡しが行われることが多いですが、投資信託によって異なるため、交付目論見書等での確認が必要です。
投資信託の購入時には、受渡日に投資家の資金が販売会社を通じて運用会社に支払われることで、受渡しが完了します。一方、売却時には投資信託が換金され、受渡日に売却代金が投資家の口座に入金されます。
資金繰りを円滑に管理するためにも、受渡日を確認することは大切です。
超重要!「基準価額」と約定日の関係性
投資信託では、約定日の基準価額に基づいて約定代金が決まります。
基準価額:購入時に指標となる価格
基準価額とは「投資信託の1口(または1万口)当たりの価格」の事で、以下数式で算出されます。
基準価額 = 純資産総額 ÷ 総口数 |
多くの投資信託では、1万口当たりの基準価額が設定されています。購入単位は、投資信託や、購入した金融機関等によって異なります。
基準価額は毎日1回更新される
投資信託の基準価額は、運用会社によって1日1回公表されます。その日の取引終了後に基準価額が算出され、夕方から夜にかけて公表されることが一般的です(正確な公表時間はファンドや運用会社によって異なります)。
最新情報は、運用会社や購入した金融機関等の公式サイトで確認するのが確実でしょう。
購入単価は約定日に決まる
投資信託の購入単価は、申込日ではなく、申込後、取引が成立する約定日の基準価額で決まります。そのため、申込時に確認した基準価額と異なる価格で約定することになります。
投資信託は注文後に基準価額が決まることから、事前に正確な購入価格を知ることはできません。そのため、基準価額の推移を確認し、市場の動向を把握・予測することが大切です。
約定日のスケジュールを具体例で確認
改めて申込日や約定日、受渡日のスケジュールを具体的な事例で確認しましょう。
投資対象が国内資産となる投資信託を購入する場合
受付締切時間を過ぎないかぎり、投資信託の売買注文を出した日が申込日および約定日になります。
≪前提条件≫
・受付締切時間:15時30分
・受渡日:約定日より起算して4営業日目(約定日を1営業日目とする)
・水曜日は日本の祝日
例1:注文を月曜日の13時に出した場合
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例2:注文を月曜日の17時に出した場合
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投資対象に海外資産を含む投資信託を購入する場合
海外資産を含む投資信託を購入する場合、約定日は申込日の翌営業日以降になることがあります。
申込日は、営業時間内に注文を出した場合は当日、締切時間を過ぎた場合は翌営業日となります。そのうえで、約定日は基本的に申込日の翌営業日以降となり、これは海外市場との時差や基準価額の決定プロセスが影響するためです。
≪前提条件≫
・受付締切時間:15時30分
・約定日:申込日の翌営業日
・受渡日:約定日より起算して4営業日目(約定日を1営業日目とする)
・初週火曜日は米国の祝日(日本は営業日)
例1:海外資産(米国)を含む投資信託の注文を月曜日の10時に出した場合
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例2:海外資産(米国)を含む投資信託の注文を月曜日の17時に出した場合
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上記の例2のように、海外市場の休場日(祝日等)は、購入や売却の申込不可日となるため、投資信託の売買注文が完了するまでに1週間以上かかることもあります。
海外市場の休場日は、ファンドによって異なります。ファンドの休場日は、目論見書等の書面や運用会社等の公式サイトで確認することができます。
「約定が遅い」「行われない」はどうして起こる?
実際に投資信託の売買取引を始めると、「約定が遅れる」あるいは「約定が行われない」といった事態が発生することもあります。これは、国内外の市場間の時差、各国の規制の違い、金融機関のシステム障害などさまざまな理由が考えられます。
基準価額が決まるタイミングはファンド次第
基準価額の決定タイミングは、ファンドによって異なります。特に海外資産を主な投資対象とする投資信託の場合、市場の取引時間や時差の影響により、約定日や基準価額の決定に時間がかかることがあります。
したがって、投資信託を購入する際は、手続きに時間がかかることを考慮し、注文のタイミングによっては思わぬ価格で約定するリスクを認識しておく必要があります。
大型連休や年末年始の取引には要注意!
大型連休や年末年始に投資信託を注文すると、市場が休場している期間は約定せず、連休明けに約定します。連休前後で市場環境が大きく変動した場合、想定外の基準価額で約定する可能性があることから、連休明けは価格変動リスクに注意しましょう。
また、年末に注文した投資信託の受渡日が翌年となる場合、NISA(少額投資非課税制度)の非課税枠は翌年分として適用されます。このため、年内の非課税枠を利用する場合は、受渡日が年内となるように計画的に取引を行いましょう。
大型連休や年末年始の取引では、事前に約定日や受渡日、基準価額の変動リスクを確認することが重要です。取引スケジュールと市場動向を十分に把握したうえで、注文不可日や注文締切時間等に注意して売買注文を出しましょう。
まとめ
投資信託の取引では、「申込日」「約定日」「受渡日」の違いや、約定日と基準価額の関係を正しく理解しておくことが大切です。これらを十分に把握していないと、予期しない損失を被る可能性があります。
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