
初心者を狙う投資詐欺の手口とは?騙されないために意識すべきこと
#投資初心者
公開日:2025/05/02 更新日:2025/05/02文/阿部 司 日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
投資を始める際に気をつけてほしいのが“投資詐欺”です。ご自身の大切な資産を守るためには、詐欺の手口を理解し、十分に注意しなければなりません。本記事では、代表的な投資詐欺の手口と、被害を防ぐための方法を解説します。
もくじ
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どのくらい詐欺被害が起きている?
金融庁が提供する“「金融サービス利用者相談室」における相談等の受付状況等”によれば、2024年10月から12月の間に、詐欺的な投資勧誘に関する相談が1,641件寄せられたとのことです。さらに、このうち1,406件は実際に被害が確認されたケースとされています。
前年同期の相談件数2,377件(うち被害有りは2,013件)と比較すると減少していますが、依然として多くの方が詐欺被害に遭っており、十分な警戒が求められる状況です。
要注意! 巧妙化する投資詐欺の手口
投資詐欺には、実にさまざまな手口があります。代表的なものには、SNS型投資詐欺、情報商材勧誘詐欺、劇場型投資詐欺などがあります。こうした手口は年々巧妙になっているため、初心者の方は特に注意が必要です。被害を防ぐためにも、どのような手口があるのかをしっかり理解しておきましょう。
SNS型投資詐欺
SNS型投資詐欺は、XやInstagramなどのSNS上に著名人の名前・写真を悪用した嘘の広告を出したり、「今すぐ稼げる・絶対に儲かる方法を教えます」といったメッセージを送り、SNS上で数回のやり取りを重ねて被害者を信用させ、「投資金」や「手数料」という名目で金銭を振り込ませたりする詐欺です。
情報商材勧誘詐欺
情報商材とは、SNS上で販売されている「副業や投資で儲かるためのノウハウ」と称される情報のことです。具体的な詐欺の事例には、「この情報があれば誰でも簡単に稼げる」「返金保証があるから安心」といった謳い文句で、高額な商材を売りつけるケースがあります。
実際に購入しても、価値のない情報であったり、聞いていた話と異なる内容の情報が送られてきたりするなど、購入者が損失を被るケースがほとんどです。また、情報商材をきっかけに、電話やWeb会議で高額なサポート契約、ビジネスセミナーなどを勧誘されるケースもあります。
劇場型投資詐欺
劇場型投資詐欺とは、複数の業者が登場し、それぞれ異なる役割を演じながら参加者を巧妙に騙す手口です。
具体的な詐欺の事例として、詐欺グループはまず、実在する証券会社Aの社員を偽り、株式や社債などを購入しないかという勧誘をします。その後、別の証券会社Bの社員を偽る業者から、当該銘柄を高値で買い取りたいという連絡があります。この話を信じて、証券会社Bに転売して利益を得ようと、証券会社Aを偽る業者に購入代金を支払ってしまうと、その後連絡が取れなくなるなどして、金銭を騙し取られてしまいます。
被害回復型詐欺
被害回復型詐欺とは、すでに投資詐欺に遭った人に対して「お金を取り戻せる方法がある」と持ちかけ、金銭を騙し取る手口です。
よくある勧誘としては、「あなたのお金は必ず取り戻せます」といって安心させ、保証金や手数料などの名目で追加の支払いを求めるものがあります。しかし、これは被害者の不安につけこんで、より多くの金銭を奪おうとする詐欺師の策略です。
投資詐欺の被害者は、経済的にも精神的にも大きなダメージを受けています。その弱みにつけこみ、甘い言葉をかけて、詐欺を仕掛けるのが被害回復型詐欺の特徴です。
名義貸し型詐欺
名義貸し型詐欺とは、投資のために名義を貸すことに応じた人を、後に違法行為を行った当事者として仕立て上げ、金銭を騙し取る手口のことです。
具体的な詐欺の事例として、「社債を購入したいのであなたの口座を使わせてください。手数料を支払います。」といった言葉で口座の名義を借りようとするケースがあります。名義貸しを了承してしまうと、行政当局を名乗る人物から「名義貸しという違法行為を行ったため訴える」といった内容の連絡があり、トラブル解決のために金銭を要求されることがあります。
もし名義貸しの話を持ちかけられた場合は、決して承諾することなく、ただちに警察などに相談することが大切です。
ポンジスキーム
ポンジスキームとは、新規投資家から集めた資金を使って先行投資家に利益を払うというサイクルを繰り返す、代表的な投資詐欺の手口です。
一般的な勧誘では、「この商品は絶対に儲かる」「今すぐ投資すれば高利回りが約束される」などと謳い、極端に高い利回りを示して投資商品を販売します。「先行投資家には必ず利益が還元される」と強調し、投資家の欲をあおるのが典型的なパターンです。
しかし実際には、商品に実態はなく、新規投資家から集めた資金で先行投資家へ配当を出しているだけに過ぎません。やがて資金が不足すると突然事業が停止し、新規投資家は出資金をすべて失い、先行投資家も利益を受け取れなくなるケースが大半です。
さらに、友人や知人を紹介すると紹介料がもらえるといった「ねずみ講」の要素を含む場合もあります。知らずに犯罪に加担したり、被害を拡大する一因となったりする恐れがあるため、十分に注意が必要です。
投資詐欺に遭わないために意識したいこと
投資詐欺は多様な手口が存在するため、まずは自分自身の判断力を磨き、常に警戒心を持つことが大切です。SNS上での投資勧誘や、高利回り・元本保証を謳う投資商品には特に注意しましょう。
「絶対に儲かる」などのフレーズに敏感になる
投資詐欺では、甘い言葉で投資家の気持ちをあおるフレーズがよく使われます。「絶対に儲かる」「著名人が参加しているから安全」といった謳い文句は、実際には根拠がない場合がほとんどです。もっといえば、投資の世界において、リスクゼロで確実に利益を得る方法はありません。
高い利回りや安全性を強調されても鵜呑みにせず、警戒心を持って判断しましょう。
「金融商品取引業者」「暗号資産交換業者」かどうか確認する
投資商品を検討する際は、まず取引業者の情報を確認することが大切です。業者名や商品名をインターネットで検索することで、その会社が実在しない、あるいは怪しい情報が見つかる場合があります。
ただし、会社が実在しているからといって安心してはいけません。金融庁が公開している「金融商品取引業者一覧」や「暗号資産交換業者一覧」に業者名が掲載されているか確認する必要があります。これらのリストに名前があれば、その業者が適法に金融関連業務を行っていると判断できます。リストに載っていない業者や情報登録が一致しない業者の場合、詐欺の可能性が考えられます。
金融庁のWebサイトには、投資詐欺の被害を防ぐための情報が数多く掲載されています。投資を検討する際には、こうした公的機関の情報を確認し、判断材料とすると良いでしょう。
知人・友人からの誘いでも安易に信用しない
知人や友人からの誘いをきっかけに投資詐欺に遭っているケースも報告されています。近しい人からの誘いほど信じてしまいがちですが、その人自身も騙されている可能性があるため、注意が必要です。
例えば、知人が「これは絶対に儲かる」と強くすすめてきた場合、それは警戒すべき兆候です。冷静に情報を集め、金融庁の公開データなどで業者の信頼性を確認しましょう。
少しでも不安に思ったら相談する
投資話を持ちかけられ、不安や疑問を感じた場合は、そのまま放置せず、専門家に相談することが重要です。たとえ知人からの話であっても、少しでも不審な点があれば、勇気を持って適切な窓口に相談しましょう。
金融庁が運営する「金融サービス利用者相談室」や、消費者庁の「消費者ホットライン」では、投資詐欺に関する相談を受け付けています。投資商品の内容や業者の信頼性について、専門家から無料でアドバイスを受けることが可能です。
また、日本弁護士連合会が運営する「消費者ホットライン」や、各地の消費生活センターでも、投資詐欺の相談を受け付けています。こうした公的機関や支援団体に早めに相談することで、被害を未然に防いだり、問題の早期解決につながったりする場合があります。
金融リテラシーの向上が一番の投資詐欺対策
近年、投資詐欺の手口はますます巧妙化しており、一見して詐欺とは思えないような案件が増えています。冷静に考えれば怪しいと気づくはずの提案でも、巧妙な演出によって被害に遭うケースが少なくありません。
そのため、投資詐欺に遭わないためには、投資家自身が金融リテラシーを高めることが必要不可欠です。金融商品の仕組みや特性、業者の信頼性を見極める方法など、基本的な知識を身につけておきましょう。
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