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インフレに強い資産とは?インフレに備える方法を解説

作成者: 伊藤 慎一|2025/05/30

 

日本は現在、モノやサービスの価格が上がり、相対的にお金の価値が下がるインフレの時代です。ご自身の資産をどのように守るべきか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、インフレに備えるための資産運用の方法についてわかりやすく解説します。

 

インフレとは?

まずはインフレの基本を押さえましょう。インフレとは「インフレーション」の略称で、物価が持続的に上昇する現象を指します。インフレとは反対に、物価が下がり続ける現象のことをデフレ(デフレーション)と呼びます。

かつて日本では長期間にわたりデフレが続いていましたが、近年は原油価格の高騰や円安の影響でインフレが進んでいる状況にあります。

 

モノやサービスの価格が上がりお金の価値が下がる

インフレが起きると、モノやサービスの価格が上がり、購入するためのお金がこれまで以上に必要になるため、結果的にお金の価値が下がってしまっている状態になります。

例えば、以前は100円で購入できた商品が200円に値上がりした場合を考えてみましょう。一見するとモノの値段が上がっただけのように思えますが、実質的には100円の価値が半分になったともいえます。

このような状況が続くと、収入が増えないままでは生活水準を維持するのが難しくなります。また、現在の日本が低金利の環境下にあることを考えると、銀行預金だけでは実質的なお金の価値が目減りしてしまう可能性が高くなります。

なぜインフレが起こるのか?

インフレが起こる要因はさまざまですが、その中でも主要なものについて3つ解説します。

 

  1. 需要過多と供給不足
    需要と供給のバランスが、物価に影響を及ぼすことがあります。需要が増加し、供給が追いつかない状況では、モノやサービスの価格は上昇します。例えば、世界的な半導体不足により半導体の価格が引き上げられたケースがこれに該当します。

  2. コストの上昇
    原材料費や人件費の高騰は、企業の製造コストを押し上げます。その結果、増加した分のコストが製品価格に転嫁され、物価が上昇します。とくに近年においては、原油価格などのエネルギーコストの高騰が物価上昇に影響を与えています。

  3. 金融政策
    日本銀行などの中央銀行は、物価の安定を目的として金融政策を行います。この金融政策の一環として政策金利が引き下げられると、市場に出回る通貨量が増え、企業や個人がお金を借りやすくなり、消費も活発になります。このように経済が活性化されると、物価は上昇する傾向にあります。

インフレにも良い・悪いがある?

インフレは、一定の経済状況を指す言葉であり、単純に良い・悪いと評価できるものではありません。状況によっては経済を活性化させるなど好影響をもたらす場合もあれば、人々の生活を圧迫するなど悪影響を及ぼす場合もあります。

一般的に良いインフレと呼ばれる状況は、景気が拡大し需要が高まることで物価が上昇するケースです。企業の収益が増加し、それに伴い労働者の賃金も上昇するため、社会全体の経済的な豊かさが向上します。

一方、悪いインフレとは、コストプッシュインフレと呼ばれるような、供給コストの高騰によって物価が上昇するケースです。この状況では、賃金の額がそのままにもかかわらず、物価だけが上昇することで生活が苦しくなる家庭が増えるなど、消費者の購買力低下につながります。結果的に、企業の利益も圧迫され、経済全体が停滞してしまう状況に陥ります。

日本の現状は「悪いインフレ」状態?

日本では現在インフレが進行していますが、決して「良いインフレ」とはいえない状況です。

先述したように、インフレが起こる要因はさまざまなものがありますが、現在日本で起きているインフレの要因の一つは、米国との金利差拡大による円安です。円安ドル高の影響で輸入品の価格が大幅に上昇し、消費者の購買力低下につながっています。また、企業側では人件費が高騰しているものの、それが労働者の賃金に十分に反映されていないという実状があります。

物価上昇に賃金の上昇が追いついていないため、多くの家庭で生活費の負担が増加しており、経済全体の停滞が懸念されています。

 

インフレに強い資産とは?

インフレに強い資産とは、物価が上昇しても価値が下がりにくい金融商品などを指します。ここでは、一般的にインフレに強い資産と呼ばれるものを紹介します。

株式

インフレが起きると、企業は増加したコストを補うために製品やサービスの価格を引き上げることがあります。その結果、売上が伸びて収益が改善する場合もあり、その場合、株価が上昇することが期待されます。さらに、株式によっては配当を得られるため、投資家にとって安定した収益源となる点も強みです。

ただし、全ての企業がインフレ下で価格転嫁に成功するわけではありません。原材料費や人件費の高騰により、収益が圧迫される企業もあります。また、急激なインフレや金利上昇が株式市場全体に悪影響を及ぼす可能性もあります。

 

物価連動国債

物価連動国債は、物価の変動に応じて元本が増減する債券です。利率は発行時に固定されているため、物価の上昇によって元本が増加すると、それに伴い利子の額も増加します。また、平成25年度以降に発行される物価連動国債には元本保証が設定されているため、リスクは一定程度抑えられています。近年では、物価連動国債に連動した運用成果を目指す投資信託やETFも登場しています。

 

金は、古くから「有事の金」として知られ、インフレ対策にも適した資産とされています。物価が上昇する局面では、通貨の価値が下がることで金の価格が上がりやすいとされています。

実物資産として保有することもできる他、金価格に連動する投資信託やETF、少額から始められる純金積立など、さまざまな投資手段があります。

外貨建て保険

外貨建て保険は、保険料を外貨で運用する保険商品です。保険金や解約返戻金は基本的に外貨で受け取りますが、円で受け取るタイプの商品もあります。

外貨建て保険は、円建て保険と比べて予定利率が高い傾向にあります。予定利率とは、保険会社が払込保険料を運用する際に、契約者に約束する利回りのことです。低金利が続く日本に対し、米ドルやユーロ圏などの金利は相対的に高く、保険の予定利率も高い傾向にあります。

一方で、為替リスクには注意が必要です。保険金や解約返戻金を円で受け取る場合、契約時よりも円高が進むと、受取額が減少し損失が生じる可能性があります。例えば、1ドル=120円のときに契約した場合、解約時に1ドル=100円になると、円に換算した際の受取額が減少してしまいます。

 

まとめ

インフレそのものは必ずしも問題ではありません。ただし、適切な備えをしないと物価の上昇についていけず、生活が厳しくなってしまう可能性があります。

資産運用はインフレに備えるための有効な手段の一つといえるでしょう。とはいえ、資産運用には損失のリスクがつきものです。ご自身の資産を守るためには、しっかりと知識を身につけることが必要不可欠になります。

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