投資にはリスクが伴いますが、適切なポートフォリオを組むことで、より自身のリスク許容度や運用目的に合ったリスクリターンでの運用が実現しやすくなります。
本記事では、投資初心者の方向けにポートフォリオの重要性、金融商品の特徴、さらにおすすめのポートフォリオの作り方を詳しく解説します。
「ポートフォリオ」とはよく聞くものの、具体的にはよく分からない方もいるでしょう。まずは、投資におけるポートフォリオの意味とその重要性を解説します。
ポートフォリオとは、投資の目的に合わせて、どの金融商品にどの程度の割合で投資するかを決めた「組み合わせ」のことです。
投資の目的やゴールによって、適切な金融商品は異なります。自分に適した金融商品を組み合わせ、投資資金の配分を事前に決めることで、自身の投資目的に沿った資産運用が可能になります。また、価格が変動するリスクは金融商品によって異なるため、複数の金融商品を保有しているとリスク分散の効果も期待できます。
この金融商品の組み合わせを考える上で、初心者の方におすすめなのは投資信託です。投資信託は株式中心の株式型や債券中心の債券型、株式や債券などを組み合わせたバランス型など、様々な金融商品の組み合わせの投資信託があり、個別に金融商品を選ぶ手間を省けるうえ、初心者の方でもポートフォリオを構築しやすい商品です。
「ポートフォリオは経験豊富な投資家が組むもの」と誤解している方もいるかもしれませんが、投資初心者こそ、ポートフォリオを組むべきです。ポートフォリオを組むと、次のようなメリットを得られます。
ポートフォリオの理論に基づいた資産運用は、株式や債券のみの運用に比べ、自身のリスク許容度の中で、安定したリターンを得られる可能性を高めます。
例えば、株式と債券に分散投資をするとします。金利が大きく変動した際、一般的に株式と債券の価格は異なる動きをすることが多いため、株価が下落しても債券価格が維持されたり、上昇したりする可能性があります。
このように、異なる金融商品を組み合わせることは、大きな損失を回避するための有効な手段の1つです。
株式に投資をする場合、銘柄選定、買付後の値動きの把握など、投資をするにあたって常に情報収集は欠かせません。
ポートフォリオを構築しても、相場に関する情報収集は行うべきですが、投資情報の収集などの投資にかけられる時間が少ない方の場合、定期的にポートフォリオを見直し、保有資産の比率を調整することでリスク許容度にあった分散投資を継続することが可能になるでしょう。たとえ世界的な株安といった有事が起こっても、やるべきことは平時と同じです。
自分に合ったポートフォリオを構築しておくことで、相場の急変動などの際にも、投資家の精神的な負担を軽減できるでしょう。
ポートフォリオを作成するためには、金融商品の特徴を把握する必要があります。特に、金融商品ごとのリスクとリターンの理解が欠かせません。
一般的に、リスクが高い商品ほど大きなリターンが期待できます。ただし、ハイリスク・ハイリターンの商品を多く保有すると、大きな損失を被る可能性があります。
株式とは、企業が資金調達のために投資家に発行する有価証券のことです。株式を購入すると、その企業の株主となり、さまざまな権利を得られます。
株主は、その企業が生み出した利益の一部である配当金や株主優待を受け取る権利を持ちます。(配当金や株主優待のない株式もあります。)企業の業績が向上すれば株価も上昇する可能性がありますが、業績悪化などの要因で下落することも考えられます。株価は将来必ず上昇するわけではなく、価格変動リスクを伴うため、株式は債券や他の金融商品と比較してハイリスク・ハイリターンが特徴の商品といえます。
株式の分類はさまざまですが、日本国内の証券取引所に上場している企業の株式を「国内株式」、海外の証券取引所に上場している企業の株式を「海外(あるいは外国)株式」と呼びます。さらに海外株式は、地域別に「先進国株式」と「新興国株式」の2つに分けられます。
海外株式の中でも、先進国株式は比較的安定した値動きになりやすい一方で、大きな値上がりは期待しにくい傾向があります。一方、新興国株式は高い経済成長を背景に大きな値上がりが期待できる反面、同時に先進国株式よりも大きな下落リスクも抱えています。
海外株式への投資は、為替リスクを負うことにもなるため注意が必要です。
債券とは、国や企業などの発行体が投資家から資金を調達するために発行する有価証券のことです。
債券を保有することは、発行体にお金を貸すことを意味し、その見返りとして、債券の保有者(債権者)は満期日まで定期的に利金を受け取ることができ、また債券は満期日まで保有すると額面金額が戻ってきます。
債券も株式と同様、発行元が国内か海外かによって「国内債券」「海外(あるいは外国)債券」と区別します。また、海外債券を地域別に「先進国債券」「新興国債券」に分類するのも株式と同じです。
債券には金利による価格変動リスクがあります。現在の日本では低金利が続いているため、海外債券と比較して国内債券の価格変動リスクは低い傾向があります。ただし、2024年7月、日銀が政策金利を0.25%程度に引き上げる動きがあったように、金融政策などにより債券価格が大きく変動する可能性は地域を問わず存在します。
海外債券の中でも、先進国債券は、政治的・経済的な安定性が高いため、新興国債券よりも金利変動リスクが比較的低いとされています。一方、新興国債券は高い利率が期待できるものの、為替変動リスクや発行体の信用リスクも高いです。
株式投資と同様に、海外債券への投資でも為替リスクを負うことになるので、注意が必要です。
REIT(不動産投資信託)とは、投資家から集めた資金をもとに不動産に投資し、その収益を投資家に分配する金融商品です。REITの主な収益源は、テナントからの賃貸収入や所有物件の売却益となります。
「国内REIT」と「海外REIT」があり、さらに海外REITは「先進国REIT」と「新興国REIT」の2種類に分類されます。
先進国REITは、新興国REITに比べて低リスク、低利回りの傾向があります。新興国REITは、高い成長が期待されるため高利回りが期待できますが、為替変動リスクや政治リスクが高い傾向にあります。
REITは、株式や債券とは異なるリスク・リターン特性を持ち、特に不動産はインフレに強い投資先とされています。ポートフォリオの一部にREITを組み入れることで、リスク分散の効果が期待できます。
また、REITは現物の不動産投資と比べて少額から投資できる点がメリットです。そのため、投資初心者でも手軽に始められる魅力があります。
金融商品としての年金・保険は、終身保険や個人年金保険などが挙げられます。
終身保険とは、死亡保障が一生涯続く保険です。「掛け捨て」と呼ばれる定期保険と異なり、払い込んだ保険料の一部が積み立てられる「解約返戻金」の仕組みがあるため、貯蓄性も兼ね備えています。
個人年金保険は、一定年齢まで保険料を払い込み、受取開始時から一定期間または終身にわたって年金を受け取ることができる保険です。老後資金を計画的に準備する手段として有用です。
年金・保険は長期的な資産形成に適していますが、なかには元本割れのリスクがある商品や、運用利回りが低い商品もあります。自身の生活設計やリスク許容度に合わせて、最適なものを組み合わせるとよいでしょう。
オルタナティブ投資は伝統的資産な金融商品(株式や債券)以外の投資手段を指します。
一般的な市場の動向に左右されにくいことから、ポートフォリオの分散やリスク管理の手段として活用されるものであり、具体的には、コモディティ(原油・金属・農産物への投資)、ヘッジファンド(さまざまな投資戦略を活用し、リスクを抑えつつ収益を追求)、プライベート・エクイティ(未公開企業への投資や、企業の買収・再編を通じた価値創出)などが存在しています。
投資初心者の方は難しいと感じるかもしれませんが、近年では商品指数に連動する投資信託やETFが登場し、個人投資家でも手軽に投資できるようになりました。
預貯金は、最も一般的な金融商品といえるでしょう。基本的に元本が保証されており、安全性が高い商品です。
預金保険制度によって、預金者の資金は最大1,000万円とその利息まで保護されているため、リスクが低いことが大きな魅力です。
ただし、預貯金の利回りは非常に低く、2024年10月時点での普通預金の平均利息は約0.1%しかありません。また物価上昇率より高い利息がないと事実上は資産が目減りするため、預金はインフレに弱い資産であるとも言えます。
預貯金は、緊急時の資金や他の金融商品への投資原資として利用できます。自分の生活に合わせて、必要な金額を預貯金で確保しておくことが重要です。
投資の目的と許容できるリスクの度合いに応じて、3つのポートフォリオのタイプを紹介します。
以下は、東海東京証券のゴールベース型の資産運用シミュレーターである、「投資ナビゲーター」で紹介しているモデルポートフォリオです。
安定的な運用を希望する場合は、目標利回り3%未満のローリスク・ローリターンのポートフォリオが適しているでしょう。
このポートフォリオはあくまで一例であり、利回りや運用成績を保証するものではありません。
債券、特に国内債券の比率を6割近く保有するパターンです。
株式に比べて債券は価格変動が小さく、安定的な収益が期待できるため、リスクを抑えた投資に向いています。債券をベースとしながらも、株式の組み入れによってある程度のリターンも見込めます。
標準的な運用を希望する場合は、目標利回り3%以上5%未満のミドルリスク・ミドルリターンのポートフォリオが適しているでしょう。
このポートフォリオはあくまで一例であり、利回りや運用成績を保証するものではありません。
国内株式24%、先進国株式8%を合わせた32%は、リスクを完全に排除せずにリターンの可能性を取り込む意図があります。
債券の割合は全体で62%ですが、先進国債券が約半分を占めており、安定的な運用を重視しています。新興国債券10%はややリスクが高いという見方もある一方、全体のバランスを損なうほどではなく、適度なリスク分散が行っています。
また、国内REITを6%含めており、これによって不動産市場からのインカムゲインやインフレ耐性も考慮しています。ただし、地域分散を考えるなら、海外REITを追加してもよいでしょう。
リスク許容度の判定やそれに応じた資産配分は、金融機関のWebサイトやアプリの簡単な診断でおおよその目安を知ることができます。東海東京証券の投資ナビゲーターでは、モデルポートフォリオを選択したり、運用プランのシミュレーションをすることができます。便利なツールも活用して、自分に合った資産配分の比率を見極めましょう。
積極的な運用を希望する場合は、目標利回り5%以上のハイリスク・ハイリターンのポートフォリオが適しているでしょう。
このポートフォリオはあくまで一例であり、利回りや運用成績を保証するものではありません。
株式は国内・先進国を同等の割合で組み込み、新興国も加えることで成長性の高い市場からのリターンを狙っています。債券は割合を抑えつつも、先進国債券を主軸とすることで一定の安定性を確保しています。REITについては、国内と海外それぞれに10%を割り当て、地域的な分散を図っています。
どうしても自分でポートフォリオを組むのが難しいという方は、公的年金の運用を参考にするのもよいでしょう。
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の基本ポートフォリオは、国内外の株式と債券をそれぞれ25%ずつ組み入れる、上記の安定運用型よりも株式を増やした標準的なアセットアロケーション(資産配分)を採用しています。
(出典: 2024年度の運用状況 - 年金積立金管理運用独立行政法人)
このバランス型のポートフォリオは、紹介した上記のポートフォリオの中では、ミドルリスクとミドルリターンを実現するための1つの選択肢となります(ただし、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用目的は年金資金の管理であり、個人投資家の目的とは異なることを考慮する必要があります)。
また、GPIFは必要に応じてリバランスを行い、安定した運用成果を上げています。GPIFの基本ポートフォリオを参考にしつつ、定期的にリバランスを行うことで、安定した運用を目指せるでしょう。
ここでは、投資初心者の方がポートフォリオを作る際のポイントを紹介します。堅実な資産運用をスタートするために、ぜひ参考にしてみてください。
投資において最も大切なのは、投資の目的や目標を明確にすることです。「いつまでに○○円貯める」といった具体的な目標がなければ、投資を続けることが難しくなります。例えば、株価が下落した際に含み損に耐えられず、金融商品を売却してしまったり、投資をやめてしまったりする可能性があります。
「老後の生活資金を確保したい」
「子どもの教育資金を貯めたい」
「余剰資金を有効活用したい」
投資の目的によって、資産運用で必要なリターンや許容できるリスクは異なります。最適なポートフォリオを構築するためには、目的を明確にすることが不可欠です。
ただし、目標を着実に達成するためには、無理のない運用を心がけることも重要です。
ポートフォリオを構築する際に最も重要なのは、自身のリスク許容度に合わせて資産配分を決めることです。
いきなり、全額の貯金を株式に投入するような運用は非常にリスクが高く危険です。リスク許容度が低い方にとっては、手持ち資金が日々の価格変動にさらされることが精神的な負担となるでしょう。
例えば、20代から30代の方が老後資金の形成を目的に運用を考える場合、長期的な投資が可能です。そのため、ローリスク・ローリターンのポートフォリオでも、長期投資の複利効果があり、目標金額に到達しやすいでしょう。
ある程度リスクを受け入れられるようになった場合は、ハイリスク・ハイリターンの金融商品をポートフォリオに組み入れることも一案です。
ライフステージの変化に応じてポートフォリオを定期的に見直し、常にリスク許容度を意識し続けることが重要です。
金融商品を選ぶ際は、投資目的を効率的に達成できるものを選ぶことが重要です。そのためには、金融商品の人気や過去の収益率だけでなく、パフォーマンスとコストの両面からしっかりと精査する必要があります。
まず、金融商品の種類を確認しましょう。例えば、投資信託にはインデックスファンドとアクティブファンドの2種類があります。
インデックスファンドは、日経平均株価などの株価指数に連動する金融商品です。一方、アクティブファンドは、ベンチマークとなる指数を上回る運用を目指す金融商品で、一般的にインデックスファンドよりもコストが高くなります。
長期的なパフォーマンスを比較することも重要です。短期的な実績にとらわれず、長期の視点で収益率を確認する必要があります。リターンは期間によって大きく変動するため、可能な限り長い期間のデータを比較することが望ましいです。
さらに、コスト面の違いも確認しましょう。例えば投資信託では、一般的に購入時の手数料や信託報酬などのランニングコストがかかります。保有期間が長くなるほどコストが積み重なるため、できるだけ低コストの金融商品を選ぶことが理想です。
このように、パフォーマンスとコストの両面から金融商品を慎重に比較・検討することで、投資目的に合ったポートフォリオを構築できます。手間はかかりますが、長期的な資産形成を目指す上で不可欠なプロセスです。
ポートフォリオを構築するだけではなく、定期的に見直すことも必要です。ポートフォリオは、投資対象の価格変動によってアンバランスな状態になることがあります。例えば、株式の価格が上昇すると、ポートフォリオ内での株式の比率が高くなり、相対的に債券の比率が低下します。
このような不均衡を放置すると、当初のリスク水準を超えてしまい、自身のリスク許容度に合わないポートフォリオになってしまう可能性があります。そのため定期的にリバランスを行い、当初設定した資産配分比率に調整することが必要です。
ポートフォリオとは、複数の金融商品を組み合わせた投資の枠組みを意味します。着実な投資を行うためには、自身の投資目的とリスク許容度に合ったポートフォリオを作ることが重要です。
投資初心者の方は、まず債券を中心とした安定型のポートフォリオから始め、徐々に株式などのリスク性資産の比率を高めていく方法がおすすめです。
ポートフォリオは構築して終わりではありません。市場環境の変化に応じて定期的にリバランスを行い、当初設定したリスク水準を維持することが不可欠です。
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