資産運用や将来の生活設計を考える際には、「将来どのくらいお金が必要になるか」「今どのくらい貯金するべきか」などを、事前に把握しておくことが重要です。本記事では、目標金額や積立額を簡単に試算する方法について解説します。
夢や目標を実現するために必要な資金は、ライフステージや家族構成などによって異なります。資金計画を立てる際には、「ライフプランニング」や「ファイナンシャルプランニング」の視点が役立ちます。
具体的には、次の3つの観点を考慮しましょう。
将来の資金成長を見据えた運用計画を立てる
現在の資金をどのように運用するかによって、将来的にどのくらいの金額に成長するかを試算しましょう。目標金額を達成するために必要な投資元本はいくらかが明確になれば、資金計画が立てやすくなります。
目標金額達成のための年間積立額を考える
将来の目標金額を達成するために毎年どのくらい積み立てる必要があるか、また毎年一定額を積み立てた場合の将来の総額が試算できると、現在の生活費と将来に向けた資金のバランスを取りやすくなります。
元本を取り崩す際の年間受取額を考える
老後は、貯蓄や資産運用で形成した資金を取り崩して生活費に充てることが一般的です。一定の元本を、一定期間で取り崩す場合に年間いくら受け取れるか、毎年一定額を受け取り続けるためには、現時点でどのくらいの元本が必要かを試算できると、老後の資金計画をより明確に立てることができるようになります。
資産運用の計画や将来の生活設計を考える際、以下の6つの係数を活用すると、より具体的な試算が可能になります。
終価係数
投資元本を一定期間運用した場合の、将来の総額(元利合計)を算出する係数
現価係数
将来の目標金額を達成するために、現時点で必要な金額(元本)を算出する係数
年金終価係数
毎年一定額を積み立てた場合の、将来の総額(元利合計)を算出する係数
減債基金係数
目標金額を達成するために必要な、毎年の積立額を算出する係数
資本回収係数
一定の投資元本を一定期間取り崩す際の、毎年の受取額を算出する係数
年金現価係数
毎年一定額を受け取り続けるために、必要な金額(元本)を算出する係数
これらの係数を活用することで、ライフプランニングやファイナンシャルプランニングを、具体的な数値に基づいて行なうことが可能となります。用語を見ると難しく感じるかもしれませんが、計算自体はシンプルです。分かりやすくするために、全て年利5%で解説していきますので、一緒にみていきましょう。
資金を一括で運用した場合の将来の総額や、目標達成のため現時点で必要な金額を算出する際に活用できるのが、「終価係数」と「現価係数」です。
終価係数とは、現在の資金を一定の期間、複利運用した際に将来どれくらいの金額になるかを算出できる係数です。終価係数を活用すれば、まとまった資金を投資に回した場合、将来的な増加額を簡単に計算できます。
終価係数は運用期間と利率によって決まっており、すでに計算された数値が金融計算の表(係数表)としてまとめられています。例えば、年利5%・運用期間10年の終価係数は1.6289です。
したがって100万円を10年間、年利5%で運用する場合、次のように計算します。
1,000,000円 × 1.6289 = 1,628,900円 現在の元本 × 終価係数 = 一定期間後の元利合計金額 |
このシミュレーションでは、10年後の総額(元利合計)は162万円超となりました。複利運用では、利息が元本に組み込まれ、それに対してさらに利息が付くため、長期的に資産を増やしやすくなります。
現価係数とは、将来の目標金額を達成するために、現時点で必要な資金額を算出する係数です。現価係数を活用すれば、「3年後に結婚式費用として100万円が必要」「10年後に子どもの学費として300万円を用意したい」といった資金計画において、今どれくらいの元本を準備すればよいのかを計算できます。
例えば、産まれたばかりの子どもへ成人式のお祝いとして18年後に100万円を用意したいとします。年利5%で運用する場合の現価係数は0.4155です。
1,000,000円 × 0.4155 = 415,500円 目標金額 × 現価係数 = 現在必要な元本 |
つまり、18年後に100万円を用意するには、現時点で約42万円程度の資金を準備し、年利5%で運用できれば、目標額を達成できます。必要な資金を早めに準備することで、毎月の負担を軽減できる点が現価係数のメリットです。
長期的な資産運用を考える場合、投資資金を積み立てながら運用する積立投資を検討することが多いと思います。「積み立てた資金が将来いくらになるのか」を知るには年金終価係数を、「目標額を達成するために毎年どれくらい積み立てればよいのか」を知るには減債基金係数を活用します。
年金終価係数とは、毎年一定額を積み立てて複利運用した場合の将来の総額(元利合計)を算出できる係数です。年金終価係数を活用すれば、一定期間、一定額を積み立てながら運用した場合に最終的にどのくらいの資産になるのかを簡単に計算できます。
例えば、NISAの「つみたて投資枠」の年間投資枠である120万円を15年間、年利5%で運用するとします。この場合の年金終価係数は21.579です。
1,200,000円 × 21.579 = 25,894,800円 毎年の積立額 × 年金終価係数 = 一定期間後の元利合計額 |
投資元本1,800万円(120万円×15年間)に対し、15年間の運用によって最終的に2,500万円以上の資産になる計算になります。長期的な積立投資を活用することで、複利の効果を活かしながら資産を効率的に形成できることが分かります。
減債基金係数とは、将来の目標金額を達成するために必要な毎年の積立額を算出できる係数です。老後資金を準備する際の積立額を計算するのにも活用できます。
例えば、老後資金として2,000万円を20年間で用意したいとします。年利5%で運用する場合、減債基金係数は0.0302です。
20,000,000円 × 0.0302 = 604,000円 目標金額 × 減債基金係数 = 必要な毎年の積立額 |
年間約60万円、月額にすると約5万円の積立を20年継続し、年利5%で運用すると、2,000万円の資金を用意できることが分かりました。
生きていくうえで、資産を取り崩す期間が訪れることもあるでしょう。老後資金などを取り崩す際に、毎年いくら受け取れるのかを試算するには「資本回収係数」が活用できます。また、年金のように一定額を受け取り続けるために、事前にどれだけの資金を準備すればよいのかを知りたい場合は、「年金現価係数」を用いて計算できます。
これらの係数は、ローンの計算にも利用できます。資本回収係数は毎回の返済額を求める際に、年金現価係数は借入可能額を計算する際に役立ちます。
資本回収係数とは、一定期間にわたって資金を取り崩す際の年間取り崩し額を算出できる係数です。資産運用しながら毎年均等に資金を取り崩す場合、どれくらいの金額を受け取れるのかを簡単に計算できます。
例えば、老後資金として2,000万円を20年間にわたって取り崩すとします。年利5%で運用している場合、資本回収係数は0.0802です。
20,000,000円 × 0.0802 = 1,604,000円 現在の元本 × 資本回収係数 = 毎年の取り崩し可能額 |
つまり、毎年160万円程度、月額にすると約13万円を20年間にわたって受け取ることができます。このように、資本回収係数を活用すると、資産の取り崩しのイメージが掴めると思います。
年金現価係数とは、将来にわたって一定の金額を受け取るために、現在必要な資金を算出する係数です。資産運用をしながら、年金のように毎年一定額を受け取り続けるには、どの程度の資金を事前に準備しておくべきかを求めることができます。
例えば、毎年300万円を20年間受け取りたいとします。年利5%で運用する場合、年金現価係数は12.462となります。
3,000,000円 × 12.462 = 37,386,000円 毎年取り崩す金額 × 年金現価係数 = 現在必要な元本 |
約3,739万円を用意し、年利5%で運用し続ければ、20年間にわたって毎年300万円を取り崩しても資産が枯渇しない計算になります。年金現価係数を活用すれば、将来の一定額の受け取りを前提とした現在の必要資金を簡単に算出できるため、FIREの目安や老後の生活設計を考える際に役立てることができます。
今回解説した6つの係数は、今後の資産形成や、老後の生活設計・資産計画に役立ちます。これらを活用すれば、「目標金額を貯めるにはいくら必要か」や「一定期間積立投資をした場合の最終的な金額はいくらか」などを手軽に試算することができます。
今回は分かりやすくするために、年利5%を例として解説してきましたが、市況によっては高くなることも低くなることもあります。年利3%の場合、年利1%の場合など色々な条件で試算し、現在や将来必要な資金をイメージすることが大切です。
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